皮膚の感覚をロボットに あらゆる形状対応、吹き付けて作製 熊本大でセンサー開発進む

 そっと触れても分かる「皮膚」をロボットにも。熊本大大学院先端科学研究部の先端計測技術研究グループが、触感を電気信号に換えるセンサーを、あらゆる形状のものに被覆する手法の開発を進めている。皮膚を通してさまざまな情報を得る人間の機能を、ロボットにも付加する未来を見据えた技術だ。

 グループは、小林牧子准教授(44)=電子材料学、田邉将之助教(34)=信号処理学、中妻啓助教(33)=計測工学=の3人。圧電センサーと呼ばれる力や振動を電気信号に変換する仕組みを、曲面など物体の表面でどのように機能させるかについて、開発を進めている。

 小林准教授らによると、こうした技術が実現すれば、例えば介護ロボットの全身をセンサーで覆い、力の入れ具合をより人に近づける制御技術の開発に応用できる。ほかにも、配管や建物の表面に取り付ければ、超音波を送受信して内部の腐食や損傷の進行を監視することも可能となる。

 従来のセンサーは小型のチップ型かシート状で、広範囲を覆うには数多くのセンサーと配線が必要。また、柔軟性に欠けるため、ロボットの関節のような可動部分に取り付けることが難しかった。

 そこでグループは、センサー原料の圧電材料(セラミック)の粉末と接着作用がある特殊な圧電材料溶液を混ぜて、スプレーで吹き付けることでセンサーを作製する方法を新たに開発した。広範囲に均一なセンサーの薄い膜を作ることができる技術で、用途に応じた圧電材料を選ぶことでセンサーが対応可能な温度や感度などを変えることができる。

 「多機能であることに加えて、薄くて柔らかく曲げ伸ばしができるセンサーはこれまでになかった」と小林准教授。研究は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の次世代人工知能・ロボット中核技術開発事業(2015~19年度、1億8千万円)に採択。ファンドからの投資も受け、事業化を見据えた動きを加速させている。

 活用分野は幅広く、日用品をセンサーで覆えば、使い方や持ち方をモニタリングすることで、より最適な形状の設計に生かすことができるほか、音波を使った医療用診断装置への応用も可能。中妻助教は「日常生活から産業用まで、あらゆる物の状態を把握できる汎用[はんよう]性が高い技術だ」と期待を寄せる。

 今後、立体的な物に対してセンサーを塗布する技術を確立するほか、センサーで感知した情報を伝える配線の効率的な作成法などの研究を進める方針。小林准教授らは「吹き付けるという簡単な手法で信頼性が高いセンサーを安定して生産するとともに、新たな活用方法を提案していきたい」としている。(松本敦)

(2018年7月6日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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