【新日鉄住金・事業部長に聞く、新中計スタート(1)】〈薄板・飯島敦常務〉「さらなる値上げ必要」

超ハイテンなど「鋼材の高機能化、一段と」

©株式会社鉄鋼新聞社

――まずは薄板需要について。

 「国内外の薄板需要は好調に推移している。長期的に見れば、国内需要は縮小が避けられないとみているが、世界全体では安定的に需要が伸びていく。ただし、米国の232条や欧州のセーフガード等の影響により、アジアや日本国内に輸入材が還流してくる可能性は否定できず、注視が必要だと思っている」

――需要業界では大きな変化が起きています。

 「環境問題、自動化技術、IT技術革新などのメガトレンドが生じており、需要家のニーズが変化している。自動車におけるCASEが代表的だが、ビジネスモデルが変化している。そうした中で鉄鋼製品に求められる機能は変化しており、一段と高度化している。変化する機能を捉えて、商品開発とソリューション営業を徹底的に実施していくことが重要となる。それが今中期計画の『鉄を極める』ということだ」

新日鉄住金薄板事業部長・飯島常務

――そうしたメガトレンド変化がある中で、薄板事業部としては何に力を入れて取り組みますか。

 「機能の高度化、つまり鋼材の高機能化を一段と進めていく。象徴的なのは、自動車向けなどに使われる超ハイテン鋼板。そうした高機能薄板を生産するためには、従来の設備だけでは対応できず、設備の改造や増強が必要になる。板を高強度化し薄手化すると、生産設備への負荷が高まると同時に、時間当たりの生産性が低下する宿命がある。メガトレンド変化を受けて当社の進むべき方向は明確だが、それをどういう設備の構え(生産体制)で、競争力を持って生産販売していくのかを検討し、決めたら躊躇なくタイムリーに実行に移すことが、今中期計画3年間の課題となる」

――そのために必要なことは。今18年度の取り組みと合わせて聞きたい。

 「高機能材・高付加価値商品の安定供給を図るには、設備投資を行う原資を確保する必要があり、そのためには製品価値を反映した鋼材価格を実現する必要がある。将来を見据えた設備投資等は、今までのベース価格およびエキストラ体系ではなし得ないと考えており、さらなる値上げが必要だ。薄板についても、昨年度来、マージン改善としてトン5千円の値上げをお客様にお願いし、丁寧にご説明して理解を得る活動を進めてきたが、現在のところ浸透は平均トン2千~3千円にとどまっている。一方で足下では、昨年度来の市況原料、資材費、物流費高騰など、自助努力ではカバーし難いコストアップで、ちょうどその分が消えてしまった状況にある。従って、改めてトン5千円の価格改善が必要な状況になっている」

 「今年度の薄板事業部の取り組みとしては(1)安定生産(2)需要構造・需要の質の変化への対応(3)鋼材のさらなる値上げ―の3つが重点項目となる」

――メガトレンド変化により、高機能材を拡大するとのことですが重点品種は。

 「引き続き軽量化ニーズは高まることから、ハイテン、超ハイテン、ホットスタンプの商品群に磨きをかけて商品力を高めていく。また、EV化や変圧器向けの需要拡大で、電磁鋼板は大幅な需要の増加が見込まれる。電磁鋼板や高炭素鋼板など普通鋼以外の品種で能力タイト感が目立っており、技術水準をさらに向上させながら、採算の改善が前提とはなるが、需要増に見合った生産体制を検討していきたい」

 「なお超ハイテンの生産拡大については、1470メガパスカル級まで生産可能なCGLを君津製鉄所に新設することを決めている」

――自動車およびその他の産業におけるマルチマテリアル化などの取り組みについて。

 「鉄を主体にしつつ、他素材と組み合わせてお客様に提案するケースも含めて幅広い眼で見ていく。すでに新日鉄住金化学から薄板事業部に人を派遣してもらった。グループで連携を強化し、タイアップしていく」

――自動車以外の分野は。

 「建材薄板は、耐震強度さらには人手不足問題からくるメンテナンスフリーやライフサイクルコストがカギになる。耐久性や耐腐食性の高い製品が求められており、スーパーダイマ、ZAM、SGLなど高機能建材薄板製品の適用を増やしていきたい」

――建材薄板では完全子会社化する日新製鋼との連携強化が課題の一つに。

 「日新製鋼の特徴ある商品群とブランド力、当社の総合力を組み合わせ、さらなる一体運営強化によりシナジー効果が期待できると考えている」

――海外事業について。まずは自動車向け。

 「インドネシアの冷延・めっき鋼板事業は立ち上げ途上だが、北米、中南米、中国・タイ・インドなど自動車鋼板のグローバル供給体制は総じて一定のレベルに達しつつある。今後は海外でも求められる機能が変化していくので、次のステージへの準備が必要だ」

――自動車以外は。

 「電機向けでは、マレーシアで合弁のN―Eガルブが日系電機メーカー向けEG事業を展開している。需要家に求められる機能を提供し、グローバル需要を取り込みたい」

 「建材ではブルースコープとの合弁事業を展開しており、タイでは能力増強も進める。伸びゆく需要を捉えるため、一層追求していく」(一柳 朋紀)