EVに使われる金属資源コバルト、25年以降供給不足の可能性

 日本メタル経済研究所は、世界の電気自動車(EV)の動向とEVに使われる金属資源の需給見通しなどを分析した調査研究報告書「EVとメタル」をまとめた。EV用リチウムイオン電池(LIB)に使われるリチウム、ニッケル、コバルトのうち、コバルトの供給リスクが最も高く、「2025年ごろに供給不足になる可能性がある」との見方を示した上で「生産者、使用者と周辺産業の動向に加え、LIB技術開発の動向を注視することが必要である」と指摘している。

 同報告書では、EVの販売台数の予測について「各業界のポジショントークもみられ、予測の最大値と最小値に大きな幅がある」ため、1千万台、2千万台、3千万台と三つのシナリオを想定してメタル使用量を予測した。LIBに使用される3元素のうち、リチウムについては「鉱山系の増産起業が進んでおり、これらが計画通り進めば当面リチウムの需給に問題はない」と分析。ニッケルについては「埋蔵量は十分にあり、長期的には供給は需要をカバーすると期待される」としつつ、「ただし、鉱山増産体制の構築と硫酸ニッケル製造設備の増設投資は不可欠」と指摘した。

 コバルトについては「各社の増産計画がすべて実行された場合、2022年に20万トンが最大生産量となる」と想定。25年ごろまでは供給が需要を満たす余地があるが、その後は供給不足が顕在化する可能性があるとした。一方で、正極材単位重量容量や電圧の向上など電池技術が進歩すれば省コバルトも可能であるとの分析結果も示した。

 同報告書ではこのほか、EVに使われる銅需要量の予測やネオジム、ディスプロシウムの動向などの調査研究成果も掲載している。

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