【特集】「半分、青い。」半端ない、つぶやき。 「西郷どん」もSNS効果

鈴愛(すずめ)役の永野芽郁さん

 プロの番組ウオッチャーでも放送担当の記者でもないが、NHKの連続テレビ小説「半分、青い。」の盛り上がりはすごい。今や番組企画、宣伝でSNSが欠かせない存在とされるが、「半分、青い。」の番組公式ツイッターに投稿されるボリュームが半端ない。1日に何回か担当者がつぶやくが、たちまち「いいね!」が数千回付く。ヒロイン鈴愛(すずめ)役の永野芽郁さん、脇役たちのせりふ、演技が視聴者の心を揺さぶるようだ。大河ドラマ「西郷どん」も朝ドラほどでないが、放映内容によってSNSでの反響が際立つ。「朝ドラ、大河とソーシャルネット」というテーマで現状を考察してみた。(共同通信=柴田友明)

奄美大島の「西郷どん」ロケの合間、ポーズを取る西郷隆盛役の鈴木亮平さんと愛加那役の二階堂ふみさん、右は上野公園の西郷隆盛の銅像

 深い愛

 ヒロインの師匠で漫画家秋風(あきかぜ)役の豊川悦司さんの演技についての3日の公式ツイッター。「壁の絵に涙と鳥を描き足す演技は、豊川さんから監督に提案したもの。弟子3人に対する、師匠としての深い愛が感じられます」。これに「いいね!」は1万5千回を超えた。番組を見ていない方には何のことだか分からないが、ヒロイン鈴愛(すずめ)が漫画家引退に至ったことに、手塩にかけて育ててきた師匠役のトヨエツの悲しみの演技がすごく受けたということである。

 以前、5月16日付の拙稿、「特集 朝の連ドラ『半分、青い。』ロケ地の秘密 ちょっと早めのスピンオフ」では筆者が訪ねたロケ地を中心に記事にした。「ヒロインが七転び八起きしながら、一大発明を成し遂げるまでを描く」という宣伝通り、その後も視聴者の心をがっちりつかんでいるのはなぜだろうか。

 バブル期などその時代の服装、町の風景に至るまでかなり細部を忠実に再現。少女漫画ファンの方には明らかに「漫画家くらもちふさこさんの作品!」「別冊マーガレットのことね」と分かるような設定が随所に出てくる。さらに、ヒロインが小学生の時に左耳の聴力を失い、その障害にかかわる場面が何度も出てくるが、だれが見ても丁寧に描こうとした制作側の意図が読み取れる。これらを話題にして知人と話したくなる。つまり、すごくSNS向きの番組とも言える。

「西郷どん」のロケの一場面、鈴木亮平さんと二階堂ふみさん

 ネットでの広がり

 公式ツイッターだけでなく、出演者や視聴者たちのツイッター、ニュースサイトが番組の内容を取り上げ、それがまた拡散されていく。漫画のアシスタント仲間、ボクテ役で登場している志尊淳さんの「素敵な時間をありがとうございました」という5日のつぶやきに「いいね!」が3万近く付くなど、これほどネットでの広がりを持つ朝ドラは初めてであろう。

 「半分、青い。」の初回放映分の視聴率は21・8%、これに7日以内に録画を再生した視聴率を入れてまとめた「総合視聴率」は26・3%(ビデオリサーチ、関東地区)だ。最高視聴率62・9%という歴代朝ドラとして驚異的な記録となった「おしん」(1983年)とは比較できないが、近年話題になった「あまちゃん」(2013年)、「とと姉ちゃん」(2016年)などの作品と肩を並べるぐらいの視聴率で推移するのではないだろうか。

 一方、大河ドラマ「西郷どん」の初回(1月7日)の視聴率は15・4%、上記の「総合視聴率」では21・9%という数字が出ている。大河ドラマの視聴者層はあまりSNSを多用しないというイメージがあり、事実、「西郷どん」の公式ツイッターを見る限り、「いいね!」やリツィートの数字は「半分、青い。」ほど高くない。

 しかし、ある時期かなりSNSの利用頻度が高まったように筆者には見える。西郷隆盛役の鈴木亮平さんが奄美大島に流され、妻となる愛加那役の二階堂ふみさんと出会い、結ばれるシーンはかなり話題になった。5月から6月にかけての回だ。公式ツイッターでも「いいね!」を付ける人は千単位に及んだ。小柄な二階堂さんが大柄な鈴木さんを引っ張って島内を走る、ユーモラスな映像はネット受けしたようだ。

「放送と通信の融合」が朝ドラや大河で分かりやすいかたちで進んでいるというのが筆者の感想である。

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