西原村の被災モモ農園、酢に活路 廃棄せず加工、甘い香りの「桃酢」発売

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熊本地震で被害を受けた阿蘇西農園のモモ畑。地震発生から2年が経過したが、東田裕二さんは「生食用のモモの生産はまだ回復途上」と話す=西原村
販売が始まる「桃農家の飲む 桃酢」

 熊本地震で被災した西原村のモモ農家「阿蘇西農園」が、醸造酢メーカーと協力して新商品「桃農家の飲む 桃酢」を開発した。地震で農地が被害を受け、2年連続で生食用モモを大量廃棄。活路を見いだそうと加工品の開発に乗り出した。生産農家ならではの果実味豊かな仕上がりとなっている。

 同村河原地区。小型トラック1台がようやく通れるほどの山道を上った先に、東田裕二さん(61)が営む農園はある。

 モモ畑は5カ所で計1・18ヘクタール。父の急逝で農業を引き継いだ2011年に生産に乗り出した。他県の先進農家に何度も足を運び、新しい品種の勉強を重ねた。糖度が高く、繊維が少ない最新品種を「夢桃」の名称で商標登録。年間3万個の出荷を目指し、本格生産に乗り出した年に地震に見舞われた。

 本震の発生当時、畑のあちこちにくぼみやひび割れが発生。ただ、倒木はなく、消毒や草刈りなどの作業を従来通りにこなし、出荷直前までこぎ着けた。しかし、玉太りが悪く、糖度も上がらない。その年は2万個超を廃棄。翌年も1万個以上を穴に埋めた。

 「これ以上、モモを廃棄したくない。このままだと廃業するしかない」。東田さんは、モモを使った加工品作りを本格的に検討し始めた。アイスやゼリー、ジャムにすることも検討したが、採算が合わない。残ったのが飲む酢だった。

 商品化を委託したのは老舗醸造酢メーカーで、飲む酢の生産についても40年以上の実績があるサガ・ビネガー(佐賀市)。右近雅道社長が東田さんの窮状に理解を示し、全面協力。出来上がった商品は、通常の果実酢の果汁割合を高め、全体の43%(5倍希釈時は8%)とした。

 こだわったのは香りだ。香料の材料に、香りが強い品種で冷凍保存したモモの果実を使用。口に近づけた瞬間に立ち上がる甘い香りと、果実味豊かな後味が特長となっている。275ミリリットル1350円。9日から俵山交流館「萌の里」で販売する予定。「モモ農家だからこそできる品質が一番の売り。果実酢の愛好者でも、違いが分かるはず」

 生食用モモの出荷も、これから本番を迎える。玉太りなど品質面の回復はまだ途上だが、商標に込めた「夢のようにおいしいモモ」作りは諦めていない。東田さんは今日も畑に立ち続ける。(田端美華)

(2018年7月8日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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