NSブルースコープ発足5年、新経営体制に移行 新日鉄住金の派遣者「第二世代」に

 新日鉄住金と豪州のブルースコープ・スチールが折半出資するASEAN・米国建材薄板合弁事業、NSブルースコープ・コーテッド・プロダクツ(NSBS)が新経営体制へ移行している。2013年の合弁発足から5年。取締役会長、CEOのツートップが代わり、新日鉄住金が現地へ派遣する常駐者も「第二世代」以降へと交代した。NSBSは好調な業績を続けており、新たな顔ぶれでさらなる飛躍を期すことになる。

 NSBSでは非常勤の取締役会長を新日鉄住金が、CEOをブルースコープが指名している。新日鉄住金が50%出資しNSBSを形成した際は当時の樋口眞哉副社長が会長に就き、佐伯康光副社長、そして今春の役員改選を経て中村真一副社長へと会長職が受け継がれている。

 CEOも3月に交代し、サンジャイ・ダーヤル氏からブルースコープのグループCFOだったチャーリー・エライアス氏に。取締役では昨年に江川和宏常務執行役員から古田陽一常務執行役員へ代わり、日鉄住金鋼板から1人選ばれている取締役は池邊優常務の退任に伴い14年から瀬戸治・市場開拓部長が務めている。

 新日鉄住金グループからNSBSのシンガポール本社やタイ事業へ派遣していた常駐者も、この6月までに13年の初期メンバーが全員入れ替わった。営業を管掌する副社長が村上純一氏から柳岡法篤氏へと、2年前から順次交代し、CFOを務めていた大河内信生氏も7月の人事で帰国した。大河内CFOの後任には4月から武南勲氏が派遣されている。

 NSBSは鋼材を造る製鉄事業だけでなく建材薄板の加工事業を含めた展開に強みがあり、東南アジアではタイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム、米国では事業子会社のスチールスケープが西海岸のカラマとランチョでめっきラインや塗装ラインを操業。シンガポール、ブルネイ、ミャンマーには加工拠点のみを持つ。

 業績は毎年2億豪ドル近くの営業利益を上げる好調ぶりで、先月にはブルースコープ首脳が来日し新日鉄住金を訪れるなど両社の関係も良好だ。

 ブルースコープは新日鉄住金と組んだことで現在の業績回復の足掛かりとなった合理化費用を工面するとともに、新日鉄住金の技術をNSBSで取り入れ電機向けも強化できた。新日鉄住金側は50年以上の歴史を持つブルースコープの建材薄板事業を取り込むことで、海外事業の幅が大きく広がっている。

 今夏にはNSBSのタイ事業で年産能力14万トンの第3金属めっきライン(MCL)が稼働し、建材用のガルバリウム鋼板やカラー鋼板を増産する予定。タイ事業は冷延よりめっき以降の下工程能力が多くなるが、近接する新日鉄住金のタイ事業、NS―サイアム・ユナイテッド・スチール(SUS)から母材の冷延鋼板を供給でき、海外事業間のシナジーも期待される。

 一方、インドネシアやマレーシア、ベトナムの鋼板事業も能力的にはフル稼働に近い状態で、各国で伸びる需要をどう捕捉するか今後のテーマになりそうだ。

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