「ノビチョクなら死ぬはず」主張のプーチン氏、英女性の死に何と答える

By 太田清

 

ロシアのプーチン大統領(ロイター=共同)

 旧ソ連で開発された化学兵器である神経剤ノビチョクに接触し、英南部エームズベリーで意識不明の重体となった英国人女性ドーン・スタージェスさん(44)が8日、治療を受けていた病院で死去した。同様にノビチョクに接触し治療中の英国人男性チャーリー・ロウリーさん(45)は危篤状態だという。メイ英首相は同日、声明で「死去の知らせにがくぜんとし、ショックを受けている」と述べた。 

 英紙デーリー・ミラー(電子版)などによると、2人は病院に搬送される前日の6月29日、元ロシア情報機関員らがノビチョクで襲撃される事件が3月に起きた南部ソールズベリーを訪れていた。襲撃事件の容疑者がノビチョクを運ぶのに使用した注射器のような小さな容器をスタージェスさんらが拾い、接触した可能性が指摘されている。 

 3月の事件で一時、重体となった元ロシア情報機関員、セルゲイ・スクリパリ氏と娘ユリアさんはともに回復し5月までに退院。ロシア主要メディアによると、プーチン・ロシア大統領はユリアさんの退院について「兵器級の毒物が使われたなら人は死ぬものなのに、ユリアさんは全く元気そうに見える」と指摘。またスクリパリ氏についても、化学兵器が使われた場合、即死に至るはずなのに退院できたことを挙げて、英当局が主張するノビチョクによる襲撃の事実に疑問を投げかけていた。 

 スタージェスさん死去について、ロシアのペスコフ大統領報道官は哀悼の意を示した上で「英国内で毒物に接触する可能性があることは、英国民のみならず全欧州の市民にとり脅威だ」として、ロシアとして捜査に協力する用意を表明したが、ノビチョクについてのプーチン氏の過去の発言については何も触れなかった。 (共同通信=太田清)

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