相模原殺傷事件に絡み、障害者に対する差別発言を繰り返す被告の手記などをまとめた本を出版する動きを巡り、神奈川県の黒岩祐治知事は9日の定例会見で、出版社に自粛要請する考えはないとの見解を明らかにした。被告の誤った考えは容認できないとしながらも、事前規制は出版の自由を侵害しかねないと判断。「県として何らかの行動を起こすことはふさわしくない」と述べた。
知事は、植松聖被告(28)が「障害者を排除する」などと差別的発言を繰り返していることに対し、「加害者の誤った考え方は決して容認できない。こうした考えを是認することも決して許されない」と強調。一方、「出版の自由は尊重されなければいけない」とも述べ、県が出版自粛を求めることには否定的な考えを示した。
また、出版後の被害者家族らの精神的苦痛を懸念する声に対しては、「今は出版内容も把握していない。仮定の問題にどう対応するかはお話できない」と述べるにとどめた。
県などによると、都内の出版社が、拘留中の被告が書いた手記や接見記録などを出版する動きをみせている。他県では出版停止を求める署名活動などが行われており、神奈川県議会は「県は事件の当事者として出版計画を放置せず、責任ある対応を取るべきだ」と自粛要請をするよう求めていた。