まるで子供映画のようなタイトルだが、2人の女子高生の友情を軸にした王道の青春映画だ。吃音のため、人前で自分の名前が言えない実体験を投影させた押見修造の同名漫画が原作。
高校一年生の新学期。自己紹介で笑われてしまい、クラスになじめずにいた志乃は、あるきっかけで同級生の加代と友達になる。彼女もギターが大好きで音楽が生きがいなのに音痴、という悩みを抱えていた…。吃音を扱っているが、決して特殊な主人公や例外的な物語ではない。友情によって自身のコンプレックスと向き合うことで、周囲=社会とつながっていくという普遍的で真っすぐなメッセージが胸を打つ。
監督は、これが商業映画の長編デビューとなる1978年生まれの湯浅弘章。学校の教室のシーンのナチュラルな作り込み、ハイキー画面を基調とした青春映画らしいルック…演出力は確かで、何より、会話もなく時間だけが過ぎる夜のバス停やラスト・シーンでにじみ出す、抑制の効いた情感が素晴らしい! また、友情を体現する若き主演女優二人の好対照をなす演技も見どころだ。
決して大柄な映画ではないけれど、青春の爆発力がすさまじく、そのパワーとみずみずしさがない交ぜとなって押し寄せ、見る者を圧倒する。と同時に、映画の持つ社会的な役割や懐の深さについても教えてくれる珠玉の青春映画だ。★★★★★(外山真也)
監督:湯浅弘章
脚本:足立紳
出演:南沙良、蒔田彩珠、萩原利久
7月14日(土)から全国順次公開