想像を超えた豪雨

 自分自身や近しい人にまつわる願い事をする日なのに、遠いどこかで、雨の恐ろしさに震えるどなたかの無事を祈る日になった。七夕の日、列島は西日本を中心にすさまじい豪雨に襲われた▲「ゴーッと地響きみたいに水が来て、家が5軒、6軒と目の前を流れて…」。広島市の男性が濁流のものすごさを語っていた。河川の氾濫、冠水、土砂崩れの爪痕の深さに言葉を失う▲経験したことのない大雨が予想されるときの「大雨特別警報」が本県を含む11府県に出され、気象庁は最大級の警戒を呼び掛けたが、被害は広がり、死者100人をはるかに超える「長崎大水害以降、最悪の豪雨被害」となった▲いつでも避難できるように促す「避難準備情報」や避難の「勧告」「指示」が出た後、水かさがあまりにも急速に増し、避難できなかった人も多数いたと聞く。所によっては「大雨特別警報」の発令が遅すぎたとも聞く▲豪雨が長時間、同じ所に降り続ける。想像を絶する早さで増水し、避難の余地も与えない。天の非情と言うほかない▲この大雨で、県内の23万9千世帯に避難勧告が出されたが、避難所に身を寄せたのは1千世帯を下回ったという。経験したことのない豪雨が、想像を超えた水害が、実際に西日本を襲った。わが身に引き付けつつ目を凝らしたい。(徹)

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