【現地ルポ】〈「新日鉄住金エンジニアリングUSA」〉「座屈拘束ブレース」を拡販 米国でシェア3割目指す

 新日鉄住金エンジニアリングの米国現地法人、新日鉄住金エンジニアリングUSA(NSEUSA、本社・カリフォルニア州サンマテオ、社長・前田泰史氏)は米国で座屈拘束ブレース(BRB)の製造・販売を手掛ける。現地を取材した。(村上 倫)

 NSEUSAは米国で座屈拘束ブレース『アンボンドブレース』を販売。従業員は前田社長を含め日本人2人とローカルエンジニア1人と事務スタッフ1人で、人材育成の一環として日本から若手社員が数カ月間の研修に訪れる。

 カリフォルニアでは1994年のノースリッジ地震で甚大な被害を受け耐震への関心が高まった。新日鉄住金エンジも98年に米国で大学や構造設計事務所向けにBRBの営業を開始した。99年には実プロジェクトへの適用へ向けカリフォルニア大学バークレー校で実験を実施。デービス校で初採用となり、以降米国でも座屈拘束ブレースが多数採用されるようになる。当時は日本から輸出していたが、BRBはまだ米国に存在せずしばらくは独壇場となった。

 採用拡大につれローカルの競合が出現し、2003年ごろには3社競合状態に。05年には米国鋼構造協会(AISC)が設計基準を制定し、設計手引書の発行などで基準化が進展。大手設計事務所も病院や大学施設などを中心に設計に織り込むようになるなど一般工法化したが、競争が激化する中で営業力・コスト競争力などでローカルの競合が有利となり日本からの輸出に限界が見えてきた。そこで現地生産・現地法人の開設が検討される。05年には『アンボンドブレース』の委託加工先で一般鋼構造物の製作などを手掛ける矢嶋(本社・東京都国立市)の米国支社、矢嶋USAがネバダ州リノ市に設立され現地でのブレース生産を開始。11年にNSEUSAが設立された。

 日本では設計事務所などへの織り込み営業が中心だが、米国では鉄骨ファブリケーターへの営業が中心。NSEUSAの西海岸における入札案件の捕捉率はほぼ100%で「大手ファブをはじめほとんどのファブから繰り返し見積もり依頼が寄せられる関係を築いている」と胸を張る。ロサンゼルスでは西海岸で最も高い約335メートルの『ウィルシャーグランドタワー』にも『アンボンドブレース』170本を納入し、建物の安全・安心を担保している。

 米国における建設支出額の成長率は年間6%超で、2021年には1兆5900億ドルに達するとの予測もある。ターゲットとする非住宅建設投資も21年には5千億ドルと一定の伸びが見込まれ、BRBも今年度3千万ドル(約33億円)超の市場規模が想定される。需要は堅調で20年には最大で4300万ドル(約47億円)程度まで拡大するとの試算もあるという。堅調な需要を確実に捕捉するため「よい製品を納期通り納めることが重要だ」と前田社長は強調する。

 さらなる売上規模拡大へ向け「工務や製造の効率化に取り組み、納期対応力や品質向上を図っていく」。17年は過去最高水準の生産量となったことから新日鉄住金エンジ本社から製造管理経験者を矢嶋USAに常駐させ〝見える化〟の推進など効率化を図り対応した。

 また、収益性の高い大軸力や長尺といった高難度案件に対しても「設計段階からの設計事務所への営業展開や設計業務支援などを行い受注拡大を図りたい」。すでに病院施設の大型案件で成果があり、18年のNSEUSAの米国におけるBRBのシェアは3割に拡大するもよう。「大型案件がなくてもシェア3~4割を確保できるよう努めたい。製作・品質管理担当の人材を現地採用するなど体制も整備していく」と前田社長。米国市場での存在感を一層高めていく。

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