セルビア首都「燃えろ」と叫んだクロアチア代表

By 太田清

ロシア戦の延長前半、ゴールを決め、喜ぶクロアチアのビダ選手(左)ら=ソチ(共同)

 サッカー・ワールドカップ(W杯)で開催国ロシアとのPK戦を制し、1998年大会以来20年ぶりに4強入りした欧州の強豪クロアチア。11日(日本時間12日)にはイングランドとの間で準決勝が行われるが、ロシア戦でも得点を挙げたDFドマゴイ・ビダ選手(29)の発言が波紋を呼んでいる。 

 ロシア戦終了直後に、フェイスブックに「ウクライナに栄光を」と叫ぶビダ選手の様子が写った動画が投稿された。「ウクライナに栄光を」との言葉は、2014年のロシアによるウクライナ領クリミア併合の際、ウクライナの民族主義者が好んで用いたスローガンで、国際サッカー連盟(FIFA)は8日、ビダ選手に注意を通告したと発表した。 

 ウクライナの強豪、ディナモ・キエフに在籍していた経歴を持つビダ選手はロシア紙に対し「政治的意図はない。冗談で、ディナモ・キエフ時代の友人に送ったものだ」と弁明したが、ロシアのニュースサイト「ガゼータ・ルー」によると、実はこれとは別の動画があることも判明。同じくフェイスブックに投稿された動画でビダ選手はビールを片手に「ウクライナに栄光を」のスローガンを繰り返すとともに、「(セルビアの首都)ベオグラード、燃えろ」叫んだのだ。 

 旧ユーゴスラビア崩壊後、クロアチア人勢力は、クロアチア紛争やボスニア・ヘルツェゴビナ紛争でセルビア人勢力と激しい戦闘を繰り広げた。内戦は終結したものの、いまも両民族間には根深い民族対立が残っており、それだけに対立をあおるような言動は禁句とされている。一方で、ガゼータ・ルーは続報で、「ベオグラード」というのはディナモ・キエフ在籍時にビダ選手らが通っていたキエフのセルビア料理レストランを指す可能性もあると報じた。ビダ選手が何を意図していたのか不明だが、これまでのところクロアチア代表側から明確な説明はないという。 (共同通信=太田清)

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