J-Startupから観る起業のあり方 真のダイバーシティを考える 第27回 SB-J コラムニスト・山岡 仁美

ダイバーシティが推進される中、様々なあり方や生き方、働き方が認知されるようになりました。そのひとつに起業が挙げられます。副業やパラレルワークも奨励されている昨今、企業内起業から任意団体、非営利組織、研究開発ラボ、大きなマーケットを狙った一大事業など、様々な起業が年間5万を越えていると言われています。

それらを考察すると、圧倒的にフォアキャスティング、つまり経験や実績に基づき戦略を描いていることが多く見受けられます。言い方を変えれば、起業のハードルも低くなっていることもあってか、単に“好き”“得意”の延長線上での起業が散見されているということです。

もちろん、“好き”“得意”を否定するのではありません。むしろそれらは、起業の強い原動力や揺るぎないビジョンの礎として、大きな要素となるのです。ただ、それだけでは、単に自己満足で一過性な事業展開となることでしょう。

そこで欠かせないのが、バックキャスティング、つまり、未来を予測し目標となるような状態を想定し、そこを起点に今何をすべきかを考える、いわば未来からの発想での事業展開。例えばSDGsは、その最たる例、と言わずとも皆さんご承知のことでしょう。

今年5月に始動した経産省も注力をする「J-StartUp」。 https://www.j-startup.go.jp/ 

日本のスタートアップ企業(ベンチャー、起業家)を官民で支援する新たな試みは、ブームではなくカルチャーを創出することを目指しているので、一過性に留まる事業では意味はありません。

そして、日本の次の成長や世界に次の革新をもたらすことを見据えているので、グローバルや地球規模も含めた未来からの発想が必要です。まさに、バックキャスティングがキーになります。

そんなスタートアップ企業(ベンチャー、起業家)を支援する動きが確実に進んでいるということは、逆に捉えれば、一過性では、もはや起業でも事業でもないのかもしれません。未来からの発想がなければ、持続可能どころか、今を生き抜くことすら危ぶまれる存在となるのかもしれません。

今、これからの起業は、少なくとも、バックキャスティングであること。それが、スタートアップの前段階のファーストステップに違いありません。

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