<ブレーク盤> 古澤剛『夢で会いましょう』 アコギが中心、人の良さそうな雰囲気が伝わってくる

古澤剛『夢で会いましょう』

 1983年大分県出身、男性シンガーソングライターのメジャー1stアルバム。全13曲中、アコギ中心のものが多いが、特段にヒネったり鋭かったりという歌詞でも、近年の若手に多い高音の歌声でもなく、奇才というよりも、人の良さそうな雰囲気が楽曲から伝わってくる。

 但し、コブクロの小渕健太郎と共同で作った『Hey Brother!』と『天の川』の2曲は、抜群のハモリや泣ける歌詞などで感情が増幅され、小渕の相方を引き立てる技量と同時に、古澤自身の熱い部分も浮き彫りになる。

 また、「絶妙に世間の中の下」と開き直りつつも、彼女への愛を誓う『チキン南蛮』や、ディスコ調で都会での失恋模様を傍観した『雨のTokyo Night』など、バンド編成の楽曲が意外で面白い。つまり、誰かと組んだり、いつもと異なる編曲でアプローチしたりすると魅力が引き立つタイプ。デビューが遅い分、今後、人生経験を投影させれば、より個性的になる気がした。

 ブックレットには俳優の安田顕による推薦文も掲載。本作を聴けば、意外な人との出逢いが人生を大きく左右することを実感するはず。

(テイチク・2778円+税)=臼井孝

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