信仰と観光、共存を 住民参加でルール作り 世界遺産登録の崎津集落

案内所前で観光客にパンフレットを渡す橋本悦子さん(右)=1日、天草市河浦町
崎津教会前で観光客に対応する吉村恵美子さん=1日、天草市河浦町

 「教会内に入ることはできますが、撮影はご遠慮ください」。天草市河浦町の崎津集落。観光の目玉である崎津教会近くで、観光案内所スタッフの橋本悦子さん(70)が道行く観光客に声を掛けていた。

 「以前、神聖な教会の扉を乱暴にたたく若い人がいて、思わず『帰れ』と怒ってしまいました」。橋本さん自身は信者ではないが、祈りの地である崎津に暮らす一人として、観光客のマナー向上に心を砕く。

 崎津教会は1934年、禁教期の村の庄屋宅跡に建てられた。崎津で布教に当たっていたハルブ神父がその地にこだわったのは、弾圧の象徴である「絵踏み」が行われたからだ。その場所には今、祭壇がある。潜伏キリシタンの流れをくむ集落にとって、特別な場所なのだ。

 このため、世界遺産登録による崎津の“観光地化”を全ての住民が歓迎しているわけではない。世界遺産登録に反対してきた60代の男性信者は「教会内の聖水入れを灰皿代わりに使われたことがある。観光客が増えればこうしたことも増えるのではないか」と心配する。

 一方で、「今のままでは教会施設や集落を維持していくのが難しいことは分かっている」とも。「世界遺産登録が良い方向に向かうよう、今後も信者としての要望をはっきり主張していく」

 6月中旬、崎津集落を含む富津地区の振興会役員や区長らと市職員が、地区のコミュニティセンターに集まった。世界遺産登録を見据え、観光客の受け入れ態勢を話し合おうと、市が呼び掛けた。

 登録勧告後の5月の大型連休中、崎津には大勢の観光客が押し寄せた。その時の混雑ぶりを踏まえ、住民は「バイクは進入禁止にできないか」「写真を撮るために墓地に入る人がいた」「拝観制限を設けてほしい」などと発言した。

 登録後の7~8月は夏休みも重なり、観光客がさらに増えることが予想される。市は「地元の協力が必要」として、住民に観光案内業務への応援を要請。教会の「拝観マナー」や集落の「散策ルール」を記したパンフレットの配布や、混雑時の教会内の入場制限を担当してもらうことを提案した。

 富津地区振興会の森田勝善会長(67)は、「地域振興のため、区長や信徒会のみなさんと協力していきたい」と応じた。協力者を募ると、信者8人を含む11人が手を挙げた。土日祝日に4人ずつ交代で活動する。

 協力者の一人で、教会の信徒会の吉村恵美子会長(67)は「今後は、崎津集落に関するもっと細かなルール作りが必要になる。信者も含めた崎津住民みんなで考えていきたい」。信仰と観光の共存へ、第一歩が動きだした。(牛深支局・谷川剛)

(2018年7月11日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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