東海地区流通最新動向、価格転嫁の動き相次ぐ 仕入れ値上昇で「市況待てない」、「ねじれ現象」に強い焦燥感

 鉄鋼メーカーはフル生産で販価は上昇、一方で市中の荷動きはさえないという「ねじれ現象」が目立つ中、東海地区の鋼材商が、ユーザー筋に近いところから順に販価改定に動き始めた。仕入れ単価は徐々に上昇し、売値に反映しなければ不採算になる。しびれを切らした扱い筋が、市況の流れを尻目に値上げに動き出した。夏場を迎えても荷動きが盛り上がらない理由は何なのか。

 名古屋市内の鋼材特約店。ユーザー筋との取り決めで毎月販価を改定している。その際、市場価格を参考にするが、それが自社の仕入れ値と大きく乖離してきた。品種は条鋼、鋼板と幅広い。同社では、ユーザーと別途交渉し、事情を説明。販価改定に真剣に乗り出した。

 メーカーはここへ来て、再び値上げ姿勢を強めている。特に鋼板は徹底しており、地区自動車関連のプロパー商い分でもトン1万円程度の価格改定をアナウンスしはじめている。メーカーによっては「4月から遡って実施したい」「厳しければ、他の仕入れルートを検討してほしい」などとする。

 理由は鉄源不足。鉄鋼メーカーは大半がフル稼働状態。しかも「下期に向けて注文はさらに増えそう」との見方も。一方で、コスト増などで収益は改善していない。設備の老朽更新にも多額の費用がかかる。

 市内の鉄骨加工現場では、構造部材や諸資材の納入に時間がかかり、工期に影響が出そうなケースも散見される。めっき加工の現場で予定が先伸びし、足元の稼働率が低下するなどの余波が生じている。

 一方、特約店やコイルセンターなどでは現物在庫が大きく減っている感じはない。鋼板コイルなどは比較的潤沢。荷動きもさえず、一部扱い筋では「春先の仕入れは目算違い」と見て換価する動きも。メーカー販価の動きとはやや異なっている。

 オリンピック需要などで案件も増え、加工現場での仕事も忙しいが、工期遅延などで流通筋に具体的な手応えはない。加工現場の忙しさも、大半は短納期対応。要するに「仕事の話はあっても、マンパワー、資材供給がそれについてきていない」という実態が見えてくる。その中でのメーカーの動きと市場の動き。この「ねじれ」は何故起こったのか。

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