中部地区の店売り特殊鋼棒線、需給タイト化加速へ

 第2四半期に入り、中部地区特殊鋼棒線需給が今後一段とタイト化する公算が高まっている。大手ユーザー向け需要の高まりを受けて、全メーカーがかねてから実施する店売り製品の引き受けカット幅が徐々に拡大。市中への供給数量のさらなる減少が避けられない情勢となった。店売り需要はパッとしないものの、自動車、部品メーカー向けは下期にかけて伸長する可能性が高い。ヒモ付き材でも供給制限が行われる中で不足分を市中買いするケースがいっそう増え、品薄感に拍車を掛ける可能性も少なくない。

 製鋼メーカー各社はこれまで流通に対し、過去の取引実績に応じて通常時と比べおおむね3割程度の申し込み制限を設定。全供給元による数量カットに伴って、幅広いサイズ、鋼種で歯抜けが生じやすい状況が続いている。

 しかし最近、一部メーカーがこの制限幅を5割前後まで拡大する方針を固めた。他社が同様の措置に踏み切ることも予想される中、ロールの遅れも考慮すると、下期以降足元以上の品薄状態に陥る見通しだ。夏場に定修を予定するメーカーがあることも懸念材料に挙げられる。

 メーカーも圧延サイクルを変更し、同一サイズをより多く生産して段取り替えを減らす、シフト見直しによる稼働時間引き上げなど生産数量を増やす取り組みを展開している。

 ただ、大手ユーザー向け需要が生産能力を大きく上回る水準で推移。ジャストインタイムでの納入が必要なヒモ付き製品の生産を優先する結果、店売り材の出荷を抑制せざるを得ない状況にある。

 足元の店売り市場はSC材、クロモリ鋼といった主要品種、50ミリ以下の細径品が特に手当てし辛く、「複数の同業社へ引き合いを出し、何とか必要量を集めている状態」(流通筋)と、品薄感が日増しに強まっている。

 一方、製鋼メーカーはヒモ付き製品の数量もカットする。大手ユーザーを抱える流通は、市中の店売り材を調達して不足分を補うため「一つの品番を10トン単位で買いたいという注文が重なり、特定のサイズが市中から消える事態も発生している」(同)もようだ。

 メーカーの生産余力がないことに加え、重要保安部品に使用されることが多い特殊鋼は海外製品での代用が難しい。供給能力の上方弾力性が乏しい反面、下期以降は例年自動車の生産ペースが上がり、より需要水準が切り上がると予想される。

 品薄解消のめどが立たず、当面極めて需給タイトな状況が続きそうだ。

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