田中貴金属、FC触媒開発センター増設 燃料電池用電極触媒生産能力7倍に

 TANAKAホールディングスは10日、製造子会社の田中貴金属工業が、燃料電池用電極触媒を開発・製造するFC触媒開発センター(神奈川県)を増設すると発表した。燃料電池市場拡大に伴う貴金属電極触媒の需要増加に対応し、製品の安定供給を図るのが狙い。投資額は約40億円。世界トップクラスのシェアを有する燃料電池用電極触媒の生産能力を現行比7倍に増強する。増設棟は18日に竣工予定で、19年1月から本格稼働する。

 田中貴金属工業・湘南工場内にある既存のFC触媒開発センターに隣接する土地に、延べ床面積約3千平方メートルの製造出荷棟と保管庫棟を増設する。同センターの延床面積は約4千平方メートルに拡大する。

 同センターでは、固体高分子形燃料電池(PEFC)の電極触媒を開発・製造している。PEFCは、燃料電池自動車や家庭用燃料電池「エネファーム」などで使用されており、今後はFCバスなどの商用車やFCフォークリフトなどの産業機械の分野でも使用の拡大が期待されている。同社では長年培ってきた貴金属触媒技術と電気化学技術を用いてPEFCのカソード用に高活性な白金触媒を、アノード用に耐一酸化炭素被毒特性に優れた白金合金触媒を開発している。

 近年、中国では水素エネルギーや燃料電池自動車を戦略産業として育成する姿勢を打ち出しており、上海市による燃料電池自動車購入に関する補助金政策の発表や研究開発拠点の開設などの動きが活発化している。また、欧州でも脱ディーゼルの動きが加速しており、自動車以外にも水素で走る燃料電池列車の試運転がドイツで予定されるなど、世界的に燃料電池用電極触媒の需要拡大への対応が求められている。

PEFC用電極触媒
新棟外観

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