中国人姉妹殺害で死刑求刑 横浜地裁、弁護側は無罪主張

 中国人姉妹を殺害し、遺体をキャリーバッグに入れて遺棄したとして、殺人と死体遺棄などの罪に問われた被告の男(40)の裁判員裁判の論告求刑公判が11日、横浜地裁(青沼潔裁判長)であり、検察側は「被告の生命軽視の態度は明らかで、厳しい非難に値する」として死刑を求刑した。弁護側は無罪を主張し結審した。判決の言い渡しは20日に行われる。

 公判は、被告が姉妹の殺害や死体遺棄に関与したのかが争点。姉妹宅のマンションの防犯カメラ映像には、被告が姉妹宅への出入りを繰り返した後、キャリーバッグ2個を運び出す姿が写っていた。弁護側は、在留資格の切れる姉から、別人に成り済ますため偽装の失踪騒ぎを起こすよう求められて協力しただけだと訴えていた。

 検察側は論告で、被告の侵入からキャリーバッグの搬出までの間「姉妹宅を出入りしたのは被告だけだった」と指摘。キャリーバッグの形状と姉妹の体格から生きたまま自力でバッグ内へ入るのは困難とした上で、「運び出した時点で姉妹は死んでいたと考えるのが妥当」と述べた。

 さらに、必要な道具を準備するなど計画性がうかがえるとし、「確定的で強固な殺意が認められる」と指弾。好意を寄せていた姉から偽装結婚を打診されて不満を募らせたとされる動機の身勝手さや、2人の命が奪われた結果の重大性などを踏まえ「死刑を回避すべき決定的な事情はない」とした。

 弁護側は、実際に姉妹の遺体がバッグ内から見つかった点から「物理的に入っていた。自力では困難というのは、検察の印象にすぎない」と反論。姉妹や被告の特定につながる遺留物を室内やキャリーバッグ内に多く残していた点などから、被告の犯行とするには不自然とし、「偽装失踪の話だけが唯一、整合性をもって説明できる」とした。

 被告は最終意見陳述で「私はやっていません」と語った。

 起訴状によると、被告は昨年7月6日、横浜市中区の中国人の姉=当時(25)=と妹=同(22)=宅に侵入し、2人の首を圧迫して殺害。2人の遺体をキャリーバッグに詰め込み、翌7日に乗用車で神奈川県秦野市の山林まで運んで遺棄した、とされる。

横浜地裁

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