レトロな駅舎と夕日で脚光 千綿駅が90周年 町の交流拠点に

 長崎県東彼東彼杵町平似田郷にあるJR千綿駅は今年、開設90周年を迎えた。海べりにたたずむ小さな無人駅は、レトロな駅舎やフォトジェニックな夕景が脚光を浴び、近年は交流拠点としての存在感を増す。町は「海の日」の16日、節目を祝う記念イベントを開く。
 地元住民には日常生活の足として、観光客には“インスタ映え”するスポットとして親しまれている。しかし開設までには曲折があった。町の資料によると、明治期に長崎-門司間の鉄道が開通した当初は地元住民の反対でできなかった。大正期に入り簡易駅の設置が決まったが、場所を巡って地域間が対立。最終的に現在地に落ち着き、1928年4月21日の開設に至った。その後、周辺に銀行や郵便局が移転し、現在の集落が発展したという。
 71年に無人駅となり、駅舎と敷地は町有に。93年の改修では旧駅舎の資材の一部を活用して往時の趣を残し、鉄道写真ファンらの人気スポットだった。2016年12月に地元のまちおこしグループが駅舎内に「千綿食堂」を開店。幅広い層のにぎわいを生んだ。3月からは停車する列車も増え、客足が伸びているという。店主の湯下龍之介さん(32)は「想像以上の反響。昔から駅を利用している人たちの理解を得ながら、地元に愛される食堂でありたい」と話す。
 町は、駅を中心としたまちづくりを強化。住民参加のワークショップで活性化のアイデアを集め、今後は観光マップやコース作りなど具体的な検討に入る。町まちづくり課は「駅を拠点に人の流れや消費のモデルをつくり、町全体に広げたい」としている。
 記念イベントは午前10時半から駅前駐車場で。地元の児童合唱団のステージや住民や観光客を対象にした「90人ポートレート撮影会」などがある。イベントに合わせ、JR九州長崎支社は同日午前11時9分の同駅発佐世保行き区間快速列車の「出発式」を企画。駅舎の雰囲気に合わせて、旧国鉄時代と同じベージュとオレンジの車両を運行する。

今年で開設90周年を迎えるJR千綿駅。大村湾を望めるレトロな駅舎が人気だ=東彼杵町平似田郷

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