行政・企業・市民の連携が好循環を生むGreenest City--前編 SB-J コラムニスト・青木 茂樹

バンクーバー国際空港の先住民アートのモニュメント (2018年6月、筆者撮影)

バンクーバー国際空港に到着すると、いきなり巨大なトーテムポールや先住民アートのモニュメントがあちらこちらに置かれているのに圧倒された。

さらに出発ロビーには、水と緑と光に溢れた室内空間にベンチやソファーが点在していて、とても居心地の良い空間が演出されているのだ。

過去に排斥してきた先住民の問題を反省し、客観・中立的に取り上げた博物館はあっても、暗い過去を今やダイバーシティや地域文化の顔として前面に出している街は少ない。

また免税店がずらっと並ぶ出発ロビーがあっても、自然の居心地の良さをウリにした空港も少ないだろう。この空港は、6月のサステナブル・ブランド国際会議2018に訪れた私に衝撃的な印象を残し、この街への期待感が高まることとなった。

  • 1.サステナビリティを体現する街 バンクーバー
室内に水と緑が広がるバンクーバー国際空港の出発ロビー(2018年6月、筆者撮影)

昨年のサステナブル・ブランド国際会議はデトロイトで開催され、破綻した街が新たに再生し始めたことを知ることができた。

今年は2020年までに世界で最もGreenest Cityを目指すというバンクーバーである。

ここは2040年までに排出ゼロや環境に配慮した交通体系・土地利用計画を、2050年までに再生可能エネルギー100%への転換といったコミュニティ計画を立てている。

ここは、自然と街の調和、民族の多様性、再生可能エネルギーの活用、新たなサステナブルな業種への雇用の創出など、まさに街自体がサステナビリティを体現した姿を現しつつある。

山と海を対岸に望むコンベンションセンター (2018年6月、筆者撮影)

今回のコンベンションセンターも、ダウンタウンの一角にありながら、一方は海辺に面して周囲にレストランが配置され、対岸の山々を眺めながらの素晴らしい立地にある。

レストランでは地ビールをはじめ、地域の食材を活かした食が提供され、Eat Local, Drink Localがキーワードとなっている。

一方、日本の会議場は海辺にありながらも見本市や国際会議が終わればそそくさと帰りたくなるような周辺環境も多い。

これを解決すべくMICE※需要に対応した日本のIR(Integrated Resort)構想もカジノ法案としての議論が中心で、その本質的な魅力や新たな需要創造が伝わらないままである。

さて、サステナブル・ブランド国際会議2018の冒頭では、市のシティ・マネジャーのSadhu Johnston氏からその戦略が語られた。

このための行動計画として、3つの高次の目的、10の目標範囲、17の数値目標があり、その成果として1990年から炭素汚染を12%減らし、人口を35%、雇用を31%伸ばしたという。

図表1)バンクーバーにおけるグリーン&ローカルな雇用の増加 (Sustainable Brand国際会議の講演資料よりhttp://www.sustainablebrands.com/digital_learning/event_video/walking_the_talk/vancouver_canada_innovating_for_good)

また、2007年からは一人当たり自動車利用は32%削減、埋め立てや焼却ゴミは27%削減された一方、ローカルフードの原料は42%増加した。

その結果、図表1)のように雇用は、ローカルフード、グリーン(環境に優しい)な建物、クリーン技術、グリーンな移動方法などの分野で、2010年からの6年間で35%増加した。

後編へ続く

※MICE…ビジネスの観光需要創造としてのMeeting(会議やセミナー)、Incentive tour(招待旅行)、Convention・Conference(国際会議)、Exhibition(展示会)の頭文字。

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