シント=トロイデンがサッカー界の未来?最先端の「Connected Stadium 事業」を推進する三社に直撃質問

先月、ベルギーリーグ1部のシント=トロイデンを買収したことでサッカー界に大きな話題を呼んだ『DMM.com』が、数社との連携により、「Connected Stadium(コネクテッドスタジアム)事業」を開始することを発表した。

詳細についてはQolyでも配信したプレスリリースを参考にして頂きたいが、その内容だけで全てを熟知できた方は少なかっただろう。

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その理由は至ってシンプル。

技術のみならず概念的にも近未来を見据えた取り組みであるため、日本国内でサッカーに触れている人間にとっては身近なものとして捉えにくいものであるからだ。

しかし、「Connected Stadium(コネクテッドスタジアム)事業」が多角的に見ても魅力的なものであり、遅かれ早かれ、「サッカー界のスタンダード」となり得る可能性を十分に秘めている点を頭に入れておく必要は間違いなくあるだろう。

そこで、今回はこれまでの発表だけでは推し量ることが難しかった重要点をピックアップし、より具体的な話を各担当者に質問させて頂いた。

今事業に携わる三社の率直な回答を読み解き、サッカー界の未来を想像して頂ければ幸いだ。

Qoly(以下省略):まずは「事の起こり」について教えて頂きたいのですが、「Connected Stadium 事業」の発端を教えて頂きたいです。

「経営権を取る前からスタジアムのIT化を考えていた。チケットの販売などもアナログであったので、DMMはITの企業なのでこれまでの知見を活かしながらテクノロジーを活用して、スポーツ観戦の価値を挙げていきたいと思っていた。Jリーグや海外のスタジアムを研究していく中で、国内でスマートスタジアムへの実験的な取り組みを行っていたCandeeにお声がけをした」(DMM社)

「開発ベンダーとしてのパートナーをCandeeとしても選ぶ際、チケット方面などですでに知見が溜まっているトランスコスモスにお願いした」(Candee社)

「コネクテッド及びスマートスタジアム市場は急速に市場拡大しており、当社も日本国内で展開しているPlayground社のEチケットソリューションのグローバル展開を検討していたところであった、タイミングよく本件にお誘い頂き参画することに至った」(トランスコスモス社)

今事業のベースには「スタジアム内での高速インターネット」があるかと思います。昨今、Jリーグのスタジアムにも徐々に「無料Wi-Fi」を開放したところも出てきていますが、ベルギーの現在のインフラ面を聞かせてください。

「ベルギー国内の他のクラブの状況までは詳しくは把握していないが、アメリカほど進んでいないと思う。シント=トロイデンのホームスタジアムでは、無料Wi-FIの開放はしている」(DMM社)

「アメリカなどではNBAのアリーナなど、場所にもよるが快適なWiFi環境は用意されている。逆にそれらと比べてヨーロッパサッカーの会場は少し劣っている印象」(Candee社)

「Wi-Fi環境の整備は増えてきている印象でまだまだ欧米でも対応しきれていない。各球団(スタジアム)またはリーグとして提供しているところもある、ベルギーでは9球団がアプリを提供しているがWi-Fi対応はシント=トロイデン以外は実施していない状態」(トランスコスモス社)

日本のサッカーファンの視点では、今事業には「先端性」を感じるものかと思います。ベルギーでもまだまだ少ない取り組みなのでしょうか?

「他のチームの状況を把握していないので詳しいところは分からないが、あまり進んでいないという印象。今回の取り組みのように、アプリを通じて観戦体験を向上させるというのは現地でもあまり聞いたことはない」(DMM社)

「ベルギーでも最先端です。述べたように9球団がクラブアプリを導入してますが、ほとんどは動画コンテンツの配信のみで、アプリ経由のチケット販売も3球団が対応しているがEチケットは2球団のみです。今後は、Eチケット、ライブストリーミング、物販、スタジアム内通貨の電子化等を展開し、UXの向上も図ります」(トランスコスモス社)

事業の色としては、現地で観戦するサポーターに向けた「オンラインとオフラインの融合施策」であり、言うならば「フィジタルマーケティング」の要素を強く感じました。「サポーターの消費者行動」などパーソナルデータの収集目的もあるのではないかと推測できますが、データを活用するアイデアなどもお持ちなのでしょうか?

「スタジアム内で使える通貨の発行を考えている。飲食やグッズの決済を簡略化していくことが目的。将来的にはスタジアムから街全体に拡大し、普段のショッピングなどでも使えるようにしていきたい。そうすると街の飲食店などとも連携しながら、そのユーザーにあったキャンペーンをうつなども考えられる」(DMM社)

「スタジアム内のWi-Fi経由限定でのライブストリーミング映像、デジタルコンテンツ、ロッカールーム中継やインタビューコンテンツなどの製作も予定している」(Candee社)

「デジタルファンエンゲージメントを今後は強化していきます、スタジアムは多くのファンが集まる場所なので、そこで集まる情報を多方面でも活用したいと思います」(トランスコスモス社)

現地のサポーター向け施策は重要ですが、やはり、日本国内の潜在顧客に向けたサービス展開も気になります。シント=トライデンのファンを日本で増やすような取り組みなどは考えていらっしゃいますか?

「まずは現地でのサポーターを増やすのが第一だと考えているので、現地が最優先です。ただ冨安選手が現在在籍していること、今後も日本人選手が増えていくかもしれないので、そこをきっかけに興味を持ってもらえればと考えている。ビジネス面では海外に進出したい日本企業の足掛かりとなるような手助けが出来ればと思っている」(DMM社)


つい先日、昨季はドイツ二部のインゴルシュタットに所属していた関根貴大の加入(1シーズンのレンタル移籍)も発表されたシント=トロイデン。

日本での試合放送も予定されており、今後は関心度が高まっていくことになりそうだが、このクラブの真の魅力は「試合外」のところに存在すると言っても過言ではないだろう。

世界中のサッカークラブが「シント=トロイデンをお手本にした」と口を揃える時代が来れば、その時サッカー界は新たな世界に足を踏み入れているはずだ。

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