<レスリング>【世界選手権代表選考プレーオフ・特集】乙黒拓斗(山梨学院大)がアジア代表にテクニカルフォールで勝って世界進出!

©公益財団法人日本レスリング協会

 (文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)

同じく代表を決めた兄・圭祐(左)と世界選手権での健闘を誓う

 “新旧神童対決”を制して世界代表を決めた! 10月の世界選手権(ハンガリー)の代表決定プレーオフの男子フリースタイル65kg級は、明治杯全日本選抜選手権優勝の乙黒拓斗(山梨学院大)が、同級全日本選手権優勝の高谷大地(自衛隊)に1分55秒、11−0のテクニカルフォールで勝利。19歳で世界選手権出場を手にした。

 対戦相手の高谷も5年前の全日本選抜選手権を18歳で制して話題になった強豪。乙黒は「高谷選手は強いので」と警戒していたが、スタンドから何度もタックルを決めて大差で決着。全10試合を行った今回のプレーオフの1試合目が乙黒で、2試合目には兄の圭祐(山梨学院大)。ともに勝ち、兄弟そろって切符をつかんだ。

 乙黒は内容に関して、「たまたま相手とのレスリングが噛み合っただけ。1本、2本と流れよく取れる時は、あんな感じで勝つ」と振り返り、勝因は終始自分の流れに持っていけたことだったようだ。

 ただ、試合中にマットで動けなくなり、ドクターが駆けつけるシーンも。周囲をヒヤリとさせた。2年前には前十字じん帯を断裂して長期離脱を余儀なくされ、昨年もけがで途中棄権した大会もあったが、今回は「足がつっただけ」と大事ではなかった。すぐに試合に戻れ、「心配したのはそこだけだった」と振り返った。

快勝にも、「技が単発になった」と反省

 スタンドからのタックルを何度も決めて会場を沸かせたが、「連携技を出せなかったのが課題ですね。(スタンドからグラウンドなどの)連続技が使えたらもっと楽だったと思います。技が単発になってしまったのが反省点」と、快勝でも課題を明確にする姿は、19歳としては頼もしい限りだ。

ローリングを仕掛ける乙黒。グラウンドでの得点力が今後の課題か?

 今回の世界選手権メンバーには、乙黒の仲間がたくさんいる。まずは所属の山梨学院大勢。現役世界王者の高橋侑希(ALSOK=同大OB)をはじめ、男子フリースタイル勢は4人が同門。さらに、囲み取材中に「少しだけお時間よろしいですか? 記念撮影をしたいんです」と声をかけてきたのは、JOCエリートアカデミー時代の仲間たち。そこには、白井勝太(日大大学院)や、向田真優(至学館大)、そして同じプレーオフで世界選手権代表を手中にした須崎優衣(早大)の姿も。

 今でこそ所属は違うものの、中学高校時代は生活すべてをともにしてきた大切な仲間たち。乙黒兄弟を含めて今回の世界選手権にはアカデミー出身者が5人も出場する。乙黒は「アカデミーや山梨学院のみんながいるから心強い」と心配事はなさそうだ。

 サッカーワールドカップでは、フランスの19歳、キリアン・エムバペの大活躍が決勝進出の原動力になった。日本の19歳、乙黒拓斗もハンガリーでの世界デビューで躍動できるか!?