【特集】日本の猛暑に触れたIOCコーツ氏 豪雨被災に哀悼の意

IOC調整委のコーツ委員長(左)、猛暑を記録した埼玉県熊谷市の大温度計(右)

 2020年東京五輪の準備を監督する国際オリンピック委員会(IOC)調整委員会のコーツ委員長が12日、都内で記者会見した。甚大な被害が出た西日本豪雨災害、会場を視察した際の暑さや湿気についてどんな印象を持ったか聞かれ、自身の考えを表明した。IOC副会長を務めたコーツ氏は、会長のバッハ氏とともに日本ではなじみ深い五輪のキーパーソン。小池百合子都知事が問題提議した会場問題ではIOC側の調整役として手腕を発揮した。「日本の夏」へのコメントに注目してみた。(共同通信=柴田友明)

 自然災害起こらないと祈る

 まずは会見でのやりとりをそのまま伝えたい。

 ―あなたは大変な豪雨の被害があった時に日本にいた。本当に厳しい暑さと湿気の中、いろんな会場を視察した、どんなことを考え、大会の準備についてどういう印象をもたれましたか。

 「私は先週から日本にいました。被災地、犠牲者の方にはミーティングの折にお悔やみ、お見舞いの気持ちを表明しました。このような自然災害が大会期間中に、起こらないと祈っているが、ちゃんと意識して準備していく」

 「ボート会場を視察した時に考えました。会場は非常に広く、風のためスタートが遅れることもある。アスリートだけでなく、審判、役員もエアコンが効いているところで休むなど、すべての会場で暑さ対策を考えないといけない。サーフィン会場を見たが、波を待っていて長時間待機することもある。アスリートが日陰にいることができるように…」

 激しいやりとり

 最初は西日本豪雨の犠牲者を悼み、被災地への思いを真摯に伝え、災害対応に言及した。コーツ氏自身がボート競技出身者であることから、ボート会場を含む他競技会場での暑さ対策にも触れ、セキュリティーチェックを受けるため炎天下並ばないといけない観客に配慮していることを強調。大型扇風機やミスト装置があること、マラソンの早朝スタートなど。コーツ氏の会見は夏対応について組織委とかなり細かく話し合いがあったと、うかがわせた。

 コーツ氏と日本側のこれまでのやりとりを振り返ってみる。東京五輪招致の際に掲げられた「コンパクト五輪」構想だったが、2年前に東京都の調査チームが小池知事にボートなど3会場の抜本的な見直し案を提言した。選手村が分けられる、ボートとカヌー・スプリントの宮城開催案についてコーツ氏が「東京大会の価値を大きく傷つける」と懸念を表明するなど、IOCや国、都との激しいやりとりはまだ記憶に新しい。

 知事就任後の「小池旋風」に勢いがある時だったが、結局は経費削減をするとした上で3会場は変わらず、一連の騒動は幕を閉じた。

(左から)東京五輪組織委の森喜朗会長、小池百合子都知事、コーツ委員長=2017年6月、東京都港区

 2000年のシドニー五輪は「コンパクト五輪」として成功した。環境団体・NGOと密接に協力して、産業廃棄物の処分地だった場所の土壌をクリーンにして、そこに主な五輪施設を建てた。五輪スタジアムの座席はプラスチック廃材を利用するなど、コストを抑えて「環境」テーマを前面に示した大会だった。コーツ氏は当時、オーストラリア・オリンピック委員会の会長としてシドニー大会の準備を進めた責任者だった。

 IOC幹部としてここ数年、東京五輪準備のため日本側とやりとりしているシーンを見て、相当「歯がゆさ」を感じているのではと想像するのは筆者だけではないように思える。

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