メクル第289号 ひよこの会童謡合唱団 日本の言葉を歌いつぐ

 ♪海は広いな 大きいな♪
 大人も子どももつい口ずさんでしまう童謡(どうよう)。その言葉は、1918年に創刊(そうかん)した児童雑誌(ざっし)「赤い鳥」の中で使われたのが始まりと言われています。それから今年で100年-。今も大切に童謡を歌いついでいる「ひよこの会童謡合唱団(だん)」(長崎市)をたずねました。

 「昔から歌いつがれている童謡には、歌詞(かし)やメロディーに時代の重みがある。日本語の表現(ひょうげん)や美しさを子どもたちに感じ取ってほしい」-。代表の野田昭子(のだあきこ)さん(79)は、そんな思いで教えています。
 57年前の1961年、野田さんが始めた小さなピアノ教室「ひよこの会音楽教室」が合唱団の原点です。レッスン後、生徒たちが自然と集まって歌うようになったそうです。子どもたちの「歌いたい!」という気持ちから始まりました。
 1987年に「ひよこの会童謡合唱団」と命名。卒団生も講師(こうし)として帰ってきました。そして教室生も初期メンバーが親となり、その子どもたちが今のメンバーに。長崎市と諫早(いさはや)市から3~12歳(さい)の16人が通っています。

50年以上前から子どもたちを指導する野田さん(左)

 「大きな声で歌うとスッキリする」。長崎市立稲佐(いなさ)小4年の大町愛美(おおまちまなみ)さん(9)は、人一倍大きな口を開けて元気よく歌っていました。「童謡を歌うと落ち着く」と話すのは、同市立西城山(にししろやま)小6年の島田美花(しまだみか)さん(11)。同市立坂本小6年の小林彩音(こばやしあやね)さん(11)も「知らない昔の言葉の意味を教えてもらい、勉強になる」。話題の最新曲とはちがう童謡の良さを感じています。
 合唱団は2年に1回、コンサートを開催(かいさい)。今年は8月12日、長崎ブリックホールで開きます。歌う童謡は16曲。「ベターっと伸(の)ばしすぎないで歌ってみて」。本番まで1カ月を切り、講師の指導(しどう)にも熱がこもっていました。
 野田さんが創作(そうさく)した短い音楽劇(げき)「どんぐりとくぬぎの木」も披露(ひろう)します。セリフや歌を覚えるだけでなく、保護(ほご)者手作りの衣装(いしょう)を身につけ、感情(かんじょう)を体全体で表現することにも挑戦(ちょうせん)。諫早市立小栗(おぐり)小5年の江嶋花音(えじまかのん)さん(10)は「まちがえないようにがんばりたい」と意気込(ご)んでいます。

本番まで1カ月。  音楽劇の通し練習にも熱が入る!

 みんなに共通するのは笑顔。諫早市立御館山(みたちやま)小3年の松永弥子(まつながみこ)さん(8)は「歌っているとワクワクする。このうれしい気持ちをみんなに伝えたい」とにっこり。以前ははずかしがり屋だったという長崎市立虹(にじ)が丘(おか)小6年の大越紀歌(おおごしのりか)さん(11)は「人前で歌うのが気持ちいい」と、堂々たる歌いっぷりでした。
 学校も学年もばらばらですが、3歳から通う長崎大付属(ふぞく)小5年の白川桃太(しらかわももた)君(11)は「友達がたくさんできた。みんなで歌うのも、休み時間に遊べるのも楽しい」と話します。
 「上の子が下の子に教えるなど、心の成長も見えます。チームとして意識(いしき)ができている。それがうれしい」と野田さん。合唱団に“輪”ができ、思いやることで“和”になる。それが「ひよこの会」の絆(きずな)-。
 ある子が言いました。「童謡は家族みんなで歌えるから大好き。コンクールにも一緒(いっしょ)に出るんだよ」。童謡を通し、家族の中にも和が広がっていました。

◎ひよこの会童謡合唱団

 県内外のコンサートやステージに出演(しゅつえん)し、全国童謡歌唱コンクールでは金賞を何度も獲得(かくとく)している。3~12歳(さい)を対象にメンバーを募集(ぼしゅう)中で、会費は月2000円。練習は第2、第4日曜日の午後1時半~4時。会場は長崎市大黒町の県交通会館3階、松藤(まつふじ)プラザ「えきまえ」いきいきひろば。7月17日午後7時から長崎ブリックホール(同市茂里(もり)町)で開かれるラウンジコンサートに出演。NHKの子ども向け番組「おかあさんといっしょ」の初代「うたのおねえさん」眞理(まり)ヨシコさんをまねいた「ひよこの会童謡合唱団コンサート『赤い鳥』からのおくりもの♪」を8月12日午後3時から同ホールで開く。問い合わせは吉見(よしみ)さん(☎090・1515・8672)。

長崎市大黒町、松藤プラザ「えきまえ」いきいきひろば

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