日本代表W杯総括!ベルギー戦分析とこれからの育成改革案

日本代表のW杯の挑戦が一区切りしました。 とは言え私達の夢はまだまだ続きます。 2050年にW杯優勝というJFAの目標達成の為、私達に出来ることを議論していきましょう。 今回は南米リーグやJリーグでも指導経験のある筆者から一つの意見をだします。

試合展開

両チームの守備

【日本代表の守備】

日本代表は基本陣形は4-2-3-1でしたが、守備時の陣形は香川真司選手が前に出て4-4-2。

ピッチの4分の3あたりからプレッシャーをかけ始めるハイプレスから守備をスタートし、そこで奪えなければ自陣まで引いて守る戦術でした。

大迫選手と香川選手は中央のパスコースを消してじわじわと制限し、ベルギーの左CBや右WBにパスが出たところで原口選手や乾選手が強めにチェイスしていました。

そこの守備方法自体は悪くなく、ベルギーが狙っていた組み立ての形はある程度制限出来たと思います。

ただしベルギーもただ苦し紛れのロングボールに逃げて主導権をいつまでも渡してくれるようなレベルではなく、日本のSBの裏に慌てず効果的なパスを送ってきて牽制してきたあたりは流石です。

【ベルギーの守備】

ベルギーは基本陣形は3-4-3でしたが、守備時には両WBが下がって5バック気味。

前線の3人は、後半のビハインド時などは積極的にボールを追いかける時間もあれば、ある程度制限するだけの守備だけして、あとは攻撃のために体力を温存する場面も散見されました。

多くの場面で切り替えは早く、日本がカウンターを仕掛けても5バックが戻れてはいましたが、だからこそ日本の1点目など、やはり両WBは体力的にキツかったとも思います。

また、5バックでかつ3トップが体力温存しているような時には、中盤やDF前の守備が緩くなりがちでした。

勿論これは乾選手のスーパーゴールの素晴らしさもありますが、ただ5バックが揃うだけでなくてボールへのアプローチはもう少しあっても良いのかなと思いました。

結果的には勝利に繋がりませんでしたが、本田圭佑選手を投入したのはこのDF前で起点になる事が出来、かつシュートも狙える能力があったからで、守備や引き分けよりも攻撃や勝利を目指した采配だったのかなと想像します。

両チームの攻撃

【日本の攻撃】

攻撃は基本陣形が4バックではありますが、タイミングを見て柴崎選手や長谷部選手が下りてビルドアップの形を変えながらゲームメイクしていました。

その柔軟性は良かったですね。

ただいつもの試合に比べると大迫選手が前で体を張ってボールを収める場面は少なめだったのかなとは感じました。

今回は少し下りて捌く機会が増えていました。

相手に屈強な選手が多い事、5バックなので数的不利になりやすい事も関係しているのでしょうか。

【ベルギーの攻撃】

ベルギーは攻撃時には3-4-3のシステムになっていました。

ただし左WBのカラスコ選手がかなり前にポジションをとって攻撃参加し、バランスを配慮してか右WBのムニエ選手も少し高い位置ではありますがボールを奪われたらすぐに戻れるくらいのポジショニングでした。

そのためか3バックは左寄りに位置しながら攻撃を組み立てるという歪な形をしていました。

歪な形が悪いという事ではなく、選手の特徴を考え、長所を活かし弱点はチームで補えるのなら立派な戦略です。

攻撃ではあえて歪な形を作って相手を惑わせるのも一つの手段だと思います。

ただしその歪な形を上手くマネジメントしないと、カウンターへの守備時にも秩序を回復出来ずにピンチを招くこともあるので、ここはサッカーの難しくもあり面白いところ。

私も頭も悩ませます。

ベルギーは日本が前からプレスに来たら裏を狙ってみたり、細かく繋いでアザールのドリブルで切り込んだりルカクに預けたりと多彩な攻撃パターンを持っていました。

高さ対策

日本が2点を先行してから、ベルギーは前からのプレスとフェライニ選手とシャドリ選手を投入して高さを活かしたプレーも選択肢に入れてきました。

元々ボールを保持して様々な攻撃を仕掛ける事までは出来ていたベルギーですが、日本の人数をかけてスペースを消す守備をなかなかこじ開ける事が出来ませんでした。

ゴール前には到達するもののゴールには到達しない。

その最後の部分の仕上げが必要な状況で、ベルギーの強みと日本のウィークポイントを突いた策略は理に適っていました。

決して高さだけの勝負やパワープレイ一辺倒というわけでなく、あくまで選択肢の一つとして組み込んできた事で日本も色々考えさせられ、高さ対策に踏み込むか迷わされた部分もあるのでしょうか。

交代枠は残っていましたので、槙野選手や植田選手、その他選択肢はありました。

ただし交代というのも結果論で語るのは簡単ですが、実際には難しい瞬間もやはりあります。

勝つために攻撃が得意な選手を出したら守備の弱点が出てしまう事もあるでしょうし、相手が高さ勝負で来たから高い選手を出したらスピードでやられたり。

確率論になってしまうこともあります。

育成年代から

今回、高さ不足で負けたので成す術が無いという意見も聞くのですが、個人的には交代次第では策はあったとは思います。

ただそれに対してまた相手が次のプランを持っていたり、簡単ではないのは前提ですが。

しかし高さのある選手を交代したとしても、それでもなおベルギーの方が空中戦に分があったのは間違いないでしょう。

そうするとやはり現代表だけに責任を押し付けるだけでなく、私もサッカー人の1人として出来ることをやりたいですね。

それにはいずれ私が代表に関われるだけの人間に成長するか、選手育成の部分で間接的にでも貢献したいです。

食育とサッカー文化

私がサッカー指導者として関わったブラジルリーグでは、育成年代から食育が盛んで、おそらくは1000を超えるチームで育成年代から自前レストランで無料で食事を子供たちに提供しています。

栄養士が考えたメニューですから、成長に必要な栄養素をバランス良く摂取出来ます。

日本人が体が小さいのに遺伝はあるのかも知れませんが、それでもこういう部分にも差が出る一因が含まれているのかも知れません。

これには文化的・社会的要因もあります。

日本の育成が『限られた予算の範囲内でこれだけを育成に回せる』という考え方なのに対して、ブラジルだと『将来これだけの価値の選手をうむために今これだけの投資をしよう』と考えます。

だから良い選手が生まれる背景も確かにありつつ、しかしそれは今までに300億円の値が付いたネイマールなどの前提があるからで、数千万円で売れた経験しかないクラブにとってそれは勇気だけの問題なのか?本当に投資したら日本からもメッシは生まれるのか?

クラブ規模によっては死活問題にもなりますから、簡単な話でもないのですが、簡易的なものからでも進められたらとは思います。

日本でも一部のクラブは徐々にスタートしていますが、更に広げたいですね。

計画的フィジカル改造

アルゼンチンのメッシを育てた事で有名なニューウェルス・オールドボーイズ。

ここでは日々の睡眠や体調を毎日記録してパソコンでデータ化しますので、成長に必要な睡眠を促しています。

また、毎月の身体測定で体重と身長に加え、体の各部位の太さや、体脂肪率、骨の成長度、各部位の筋肉量を測定します。

その数値を基に来月の目標値を設定し、そのための筋トレメニューを個別に作成します。

そのメニューは何kgで何回など、細かく決められています。

フィジコも育成だけで5人いるので、フォームチェックも行き届いています。

これらの測定はメディカル、フィジコ、栄養士などが協力して行います。

これもお金がかかることなので簡単ではありませんが、1つの参考にしたいですね。

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