「私、失敗しないので」…

「私、失敗しないので」。テレビドラマ「ドクターX」で米倉涼子さん演じる天才外科医、大門未知子の決めぜりふ。難手術を成功させ、多くの命を救う

▼「失敗しない」という医師の言葉ほど患者には頼もしいものはない。もちろん現実にそんなことを言う医師はいない。どんな名医でも人間である限り、ミスの可能性はゼロではないからだ

▼この失敗は防げたのではないか。千葉大病院でコンピューター断層撮影装置(CT)の診断画像の見落としが9件あり、治療開始が遅れた2人ががんで死亡した。担当医が専門領域だけに注目し、他の部位のがんを見逃したという

▼放射線診断専門医の画像診断報告書をきちんと確認していればミスは起きなかった。亡くなった2人のうち1人が治療を受けたのはCT検査から4年以上たってから。最初から治療していれば助かった可能性があっただけに痛ましい

▼千葉大病院だけの特異な事例ではなさそうだ。2015年1月~17年9月の間、CT検査などの見落としによる治療の遅れが全国で32件報告された、と先日の本紙に

▼大門が「失敗しない」と宣言するのは、退路を断って全力で手術に臨む覚悟の裏返しか。腕だけに頼らず、あくまでも基本に忠実で、徹底的に事前準備をすることが「失敗しない」最大の理由のようだ。天才的な腕はなくても、「基本」や「準備」を怠らないことで守れる命はあるはずだ。

=2018/07/14付 西日本新聞朝刊=

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