<プルトニウムの行方>削減へ数値目標必要

猿田佐世(さるた・さよ)早大卒。日本と米ニューヨーク州で弁護士。2009年から米議会で外交問題などのロビー活動をしている。13年からシンクタンク「新外交イニシアティブ」事務局長。今年6月から代表。41歳。愛知県出身。

◎日米原子力協定インタビュー(上)日米外交シンクタンク代表・猿田佐世さん

 原子力発電所で使用した核燃料からプルトニウムを取り出す「再処理」を、米国が例外的に日本に認めた日米原子力協定が16日に満期を迎える。協定は自動延長され、日本が所持する約47トンのプルトニウムと再処理の権利に国際的関心が高まる。東京電力福島第1原発事故で甚大な原子力被害を受けた東北は、青森県に核燃料サイクル施設を抱える。約8キロで核兵器1発分の材料になり得るプルトニウムと核燃料サイクルは今後どうなるのか、どうすべきなのか。3人の識者に聞いた。(聞き手は青森総局・丹野大)

<揺らぐ核不拡散>

 -日米を舞台に、与野党を問わず国会議員と米議会や政府とのパイプ役になっている。米国は日本に何を求めているか。

 「国内外にたまったプルトニウムの削減だ。米国はこれまで何回も要求してきた。今後も蓄積し続ければ国際的な核不拡散体制を壊しかねない」

 -米国にとって核不拡散の重要性とは。

 「核不拡散の考えは共和党、民主党の別なく広がっている。国是に近い。核兵器があるから世界的な超大国だという自覚の一方、核兵器の拡散には敏感だ」

 -日本が余剰プルトニウムを抱えつつ再処理をすることは、国際社会にどういった悪影響があるのか。

 「核兵器の材料がテロリストの手に渡る危険性が高まる懸念もあるが、一番は他国への影響だ」

 「米国は他国と原子力協定を結ぶ際、核兵器開発に必要な再処理とウラン濃縮の権利を放棄させることをゴールド・スタンダード(最善の基準)にしている。非核保有国で認められているのは日本だけ。米国は他国との交渉で『日本には認めているじゃないか』と指摘されている」

 -最近の具体例は。

 「米国が原子力産業の輸出を目的に協定を交渉しているサウジアラビアだ。中東でイランと覇権争いをしていることもあり、再処理などの権利を求め交渉で日本を引き合いに出したと聞いている。過去には中国や韓国、北朝鮮にも指摘された」

<同盟関係を優先>

 -米国は日米原子力協定の内容を改めず、自動延長を選んだ。

 「米国にとっては、あくまで多くの外交問題の一つでしかない。協定は自動延長後、どちらか一方の国が通知すれば6カ月後に効力がなくなる。同盟国である日本との関係を悪化させてまで再処理の権利を奪うより、自動延長の方がいいのだろう」

 -3日に閣議決定されたエネルギー基本計画に「プルトニウムの削減に取り組む」と初めて記された。

 「日本政府がようやく姿勢を変え始めた。国内の批判の影響もあるだろう。だが、本当に削減に取り組むなら数値目標と具体的な方法を盛り込むべきだ」

 -米国との関係を踏まえ日本は原子力政策をどう決めていくべきか。

 「米国は1970年代のカーター政権の時代に再処理をやめていて、原子力産業界ですら再処理に積極的ではない。原発そのものも斜陽産業で、国民全体や財界の関心も薄い。福島の原発事故を経験した日本は主体的に原子力政策を決定すべきだ」

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