阿蘇市「みやざわ劇場」 熊本地震で客激減、新作で巻き返しへ

動物ショーの終演後、見物客と笑顔で記念撮影する宮沢厚さん(左から2人目)とチンパンジーのプリンちゃん=阿蘇市

 夢と元気をくれるステージは熊本地震後も健在だ。阿蘇市の観光動物園、阿蘇カドリー・ドミニオンの目玉施設「みやざわ劇場」。地震が地域に影を落とす中、代表で動物トレーナーの宮沢厚さん(59)は、相棒のチンパンジー「プリンちゃん」らと元気いっぱいに笑いを届けている。

 「かわいい」「楽しいね」。1日3回の動物ショー。テレビでも話題を集めたパンくんの娘で2歳のプリンちゃんや犬たちの登場に、見物客は大喜び。終演後、宮沢さんと記念撮影する子どもやお年寄りは幸せそうだ。

 カドリーは地震で敷地の一部が陥没し、獣舎も損傷。飼育するクマ160頭やペンギン20羽などは幸い全て無事で、600人収容のみやざわ劇場も大きな被害を免れた。

 ただ、電気や水が止まり、宮沢さんら劇場スタッフ8人は管理する動物40頭・匹の世話で大わらわだった。寒さに弱いプリンちゃんたちは毛布にくるんで抱き温め、湧き水をトラックで1日に何度も搬送。数日間、全員で劇場に寝泊まりした。

 2週間後、カドリーは営業を再開したが、国道57号の寸断で来園者は激減。地域の深刻な被災状況に、宮沢さんは思い悩んだ。「動物ショーなどしていいのだろうか」

 そんな時、見物した父親から「地震後、笑わなくなった息子の笑顔を久しぶりに見て安心した」と話し掛けられたという。ファンからの差し入れや手紙にも励まされた。

 「みなさんつらい思いをしているからこそ、動物たちと笑いを提供することが僕らの役割なんだ」

 宮沢さんの迷いは消えた。動物を擬人化するショーに一部批判があるが「見る人を幸せで前向きな気持ちにできる。動物たちに優しく接していることも、お客さんに伝わるはず」と胸を張る。

 宮崎出身の宮沢さんは、チンパンジーなどと息の合った舞台で脚光を浴び、2004年にカドリーの一員に。パンくんが12年に研修生にけがを負わせて引退した3年後、プリンちゃんが誕生。パンくんは今も宮沢さんらと元気に暮らしている。

 今年開業45周年のカドリーは近年、阿蘇地域が自然災害に見舞われるたびに影響を受けてきた。熊本地震も重なり、昨年の来園者は全盛期の3割の約15万人。国道57号の復旧ルートの完成予定は2年先で、厳しい状況は当面続きそうだ。

 そんな中、みやざわ劇場は14日からプリンちゃん初の単独主演の新作を公開する。脚本と演出も手掛ける宮沢さんこん身の力作だ。

 「地震で観光客が落ち込む阿蘇地域全体の呼び水になれば。これからも幅広い世代の人たちを喜ばせるエンターテインメントを、動物たちと追求していきます」(阿蘇総局・岡本幸浩)

(2018年7月14日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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