紅一点

 紅一点という言葉は、多くの男性の中に1人だけ交じっている女性を指す。例えば、地球の平和を守る5人の隊員の中に女性が1人いる。テレビの特撮ヒーロー番組で見慣れた光景だったと、文芸評論家の斎藤美奈子さんは、1998年に刊行した「紅一点論」の中でいう▲「紅一点のヒロインとは『ひとりだけ選ばれて男性社会の仲間に入れてもらえた特別な女性』のことである」と指摘。現実社会をみても「企業も政党も議会も学会も報道機関も、同じ構図でできている」と書いた▲それから20年。政治分野の男女共同参画推進法が成立した。県と県内21市町の計22議会で男女構成比を調べたところ、16議会で女性の割合が1割に満たなかった-という記事が先日の本紙に出ていた▲女性が1人しかいない、まさに紅一点が7議会。それどころか女性ゼロが6議会もあった▲特撮やアニメでは、紅一点の構図は90年代以降崩れ始めたという。女性隊員の方が多い戦闘アニメもあったようだ。その一方で、本県の議会では今も「紅一点論」の指摘が当てはまる▲言うまでもなく、議会は住民の代表だ。現実の女性は多様な境遇や立場に置かれ、意見もさまざまに分かれる。それぞれの声を代弁して政治に反映させるためには、議員が紅一点ではとても足りない。(泉)

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