【番外編】登録決定の瞬間 世界の称賛に 胸熱く

 長崎空港を出発してから約20時間。現地時間の6月28日午前、中東の島国バーレーンに到着した。空港の外に出ると全身に熱風が吹き付けてきた。
 同国で開催中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)第42回世界遺産委員会で、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界文化遺産登録を決める審査が、いよいよ目前に迫っていた。
 同日午後、中村法道知事ら自治体関係者約20人が首都マナマの会場を視察した。知事の会場入りを取材する日本の報道陣の過熱ぶりに、他国の関係者は困惑気味。会場にいたケニア人から尋ねられた。「彼はいったい何者?」
 新規案件の審議は29日午後から始まった。潜伏キリシタン遺産は7番目。本県関係者は会場の傍聴席で審議の行方を見守った。
 3番目のサウジアラビアの遺産の審議は驚きの結果となった。ユネスコの諮問機関、国際記念物遺跡会議(イコモス)が出した勧告は「不登録」と最低評価だったが、審議の結果、勧告を覆して逆転で「登録」となった。
 推薦国のロビー活動で「登録延期」や「情報照会」の勧告が覆されるのは珍しくないが、評価が「最低」から「最高」に変わるのはまれだ。世界遺産登録を左右する「政治力」を垣間見た気がした。
 潜伏キリシタン遺産の審議は翌30日の午前11時半ごろにスタート。世界遺産委の各委員国は、イコモスの助言を尊重して推薦書を見直した姿勢を高く評価。「他国の模範」「世界遺産の本来あるべき姿」などと称賛する意見が相次いだ。
 「ここまで支持されるのは異例だ」と政府関係者。議長が木づちを打ち、登録が決まると、普段控えめな中村知事が両手を高々と上げ、喜びを表した。その様子をカメラのレンズ越しに見て、一県民として誇らしい気持ちが込み上げてきて、胸が熱くなった。
 登録決定後、ユネスコ日本政府代表部の山田滝雄・特命全権大使はうれしそうに、こう語った。「長崎はイコモスの助言に従い、丁寧に議論を重ね、真面目に取り組んできた。(満場一致の評価に)『フェアプレー賞』という評価を頂いたと思っている」
 2001年に民間による「長崎の教会群」の世界遺産登録運動が始まってから、実に17年。幾たびの挫折を乗り越えての世界遺産登録が、ついに実現した。その陰には、真面目に、誠実に取り組んできた多くの人の努力があった。世界の称賛は、それに対する「ご褒美」のように思えた。

登録決定後、中村知事(中央)ら日本代表団を祝福するため、各国の関係者が次々と押し寄せた=バーレーン、マナマ市内のホテル

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