「北朝鮮の残忍な人権侵害、250人が証言」国連人権事務所長

ソウル国連人権事務所のポールソン所長が、北朝鮮の非核化を巡る対話に北朝鮮の人権問題を含めない場合、朝鮮半島の持続的な平和の定着は難しいと主張していると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えた。

同事務所は北朝鮮の残酷な人権蹂躙の実態の継続的な調査と記録のために、2015年6月に設立された。ポールソン氏がRFAに明かしたところによれば、同事務所は現在までに、約250人の北朝鮮の人権蹂躙の被害者と目撃者からの証言を収集。そこで得た内容を、来年3月の国連人権理事会に報告するという。

北朝鮮の体制による人権侵害がいかに凄惨なものであるかは、「北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)」の最終報告書に収められた数々の証言からもうかがい知ることができる。

それでも、この報告書が人権侵害のすべての側面を網羅しているわけではない。北朝鮮では、人権侵害を通り越した虐殺事件や、ムリな工期設定による大規模な労働事故なども起きている。

そうした出来事については、もちろん情報公開などされていないから、複数の脱北者の証言を総合しなければ全容を描くことができない。そのような証言の掘り起こしは、主に民間団体やメディアが担ってきた。その後、韓国国会で北朝鮮人権法が成立したことにより、ようやく韓国政府が動き出した。

2016年10月10日に開設された韓国法務省の北朝鮮人権記録保存所(以下、保存所)はこれまでに、北朝鮮国民が受けたり見たり聞いたりした人権侵害の事例をまとめた「北朝鮮人権加害者カード」245枚を作成している。そこにリストアップされた加害者のほとんどが、国家保衛省(秘密警察)と人民保安省(警察庁)所属の人員だ。被害の事例は暴行、拷問にとどまらず、強姦などの性犯罪、強制妊娠中絶など人道に対する罪も含まれている。法務省は加害者の名前、所属機関に加え、モンタージュ写真まで確保している。

このようなデータは、いつか北朝鮮の体制が崩壊するようなことがあれば、その後に行われることになる刑事訴追の基礎的な証拠として活用される。いわば人権犯罪者の「手配書」のようなものだ。

ところがその後、南北対話の進展を受けて、韓国政府の姿勢は及び腰になってしまった。今では国連人権事務所が「頼みの綱」なのだが、韓国政府の支援なしに、果たしてどれだけの成果を上げることができるか。来年の人権理事会が注目される。

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