北松小値賀町教委 学芸員 平田賢明さん(37) 地道な調査 実を結ぶ 野崎島出身者の協力に感謝

 「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の一つ、「野崎島の集落跡」(北松小値賀町)の調査研究を担当してきた。世界遺産登録が実現し、「町に新たな宝物を見いだすことができた」と安堵(あんど)の表情を浮かべる。
 長崎市出身。県立西陵高を卒業後、徳島文理大で文化財について学び、帰郷。県内各地でアルバイトや嘱託職員として遺跡の発掘調査に携わった後、2010年に小値賀町に採用された。
 当時から野崎島は「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の構成資産として世界遺産を目指していた。だが、島内に残る旧野首教会以外の資料は少なく、「不安は大きかった」と振り返る。
 地道な調査研究を続けるうちに、神道の聖地である野崎島に潜伏キリシタンが入植して神社の氏子を装っていたことや、廃村になった野首、舟森の両集落にかつて潜伏キリシタンの組織があり、指導者もいたことが分かった。「野崎島は世界遺産に値する」と確信した。
 12年3月、野崎島南端の舟森集落跡で発掘調査を実施した。重い測量器具などを担ぎ、片道約40分の山道を歩いた。現場では、自らスコップを手に、作業員と共に汗を流した。そして集落跡の墓地で、「西方浄土」の西に背を向けて埋葬された人骨が出土した。潜伏キリシタンの埋葬方法を示す貴重な物証。「自分の考えは間違っていなかった」と静かな喜びに浸った。
 野崎島を国の重要文化的景観に選定するための同意を得ようと、土地の相続権を持つ人たちを訪ね、県外にも足を運んだ。今では多くの人が管理保全団体「小値賀・野崎会」に加入し、協力してくれている。
 「調査を通じて分かったキリシタンの営みを、子孫たちに伝えると喜んでくれる。応援してくれた野崎島出身者らにお礼を言いたい」と充実した笑顔を見せた。

野崎島の調査研究について振り返る平田さん=小値賀町歴史民俗資料館

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