手術中の病理診断 可能に 県上五島病院 長崎大学病院とICTでつなぐ 県内離島病院で初

 離島の病院で手術中に患者から採取した組織標本の拡大画像をリアルタイムで都市部などの病院の病理医がチェックし病理診断、進行中の手術に役立てるシステムが長崎県で始まった。県上五島病院(新上五島町)が、情報通信技術(ICT)で長崎大学病院(長崎市)とつながる設備を導入したもの。県内の離島病院では初。今月上旬、乳がんの手術が成功した。
 病理診断とは、患者から採取した組織や細胞から作ったガラス標本を、病理医が顕微鏡や拡大画像で観察して病変の有無などを確かめること。手術と同時並行で行う病理診断を「迅速診断」と呼び、手術中しか組織が採取できない際などに不可欠。県上五島病院によると、迅速診断が必要な患者はこれまで島外で手術を受けていたが、今後は同病院で実施できるようになった。月1、2例程度の実施が見込まれる。
 県上五島病院は、県病院企業団が運営する地域の基幹病院。病理診断充実を目的に今年、県の支援で病理検査室を新設。長崎大学病院と連携し、標本の拡大画像を県内の医療連携ネットワーク「あじさいネット」経由で遠隔から診断できる設備や機器を整えた。4月の診療報酬改定でICTの進歩を受け、遠隔病理診断などが新たに報酬対象に加わったことも背景にある。
 長崎大学病院によると、県内の病理医は2015年時点で本土部の主要8病院にしかおらず、高齢化も進んでいる。このため県の補助で同年「長崎病理医育成・診断センター」を開設。病理医育成に加え、離島などの病院から事前採取の標本を受け取って病理診断する支援を行っているが、画像による迅速診断は専用設備が必要なため実施していなかった。
 県上五島病院の八坂貴宏院長は「病理診断の充実は患者への医療サービス向上につながる」と話した。同センターの新野大介教授は「他の離島でも将来的に迅速診断が可能。県内の離島の病理診断を支えていきたい」としている。

遠隔での手術中の迅速診断の仕組み

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