歌と映像「再生」見つめ 熊本市の野田ちか子さん 音楽ビデオ 県外への一時避難に自責の念

 音楽活動に取り組む熊本市西区の主婦、野田ちか子さん(43)=写真=が、熊本地震をモチーフにオリジナルの音楽ビデオ「六歌[ろっか]」を制作した。地震直後、県外に一時避難したことで自責の念にかられた野田さんは、2年かけて県内をロケで回った。地震で傷ついた人々の心、自然、まち…。歌と映像には再生への願いが込められている。

 「逃げろ逃げろ せき立てる声」「逃げて逃げて逃げてしまった ずっとずっと責め立てる声」。1曲目の「Rebirth(リバース)」。熊本城の崩れた石垣や益城町の桜並木などの映像が流れ、ささやきかけるような声が響く。

 野田さんは本震の翌日から10日ほど、鹿児島県の実家に、当時小学4年だった娘と避難した。激しい余震や断水が続く中での決断だった。だが「熊本で頑張っている人たちを見て、『私だけ逃げてしまった』『自分は間違っていたのではないか』と悩んだ」。

 戻った自宅で葛藤を抱えながらピアノに向かっていた時、「Rebirth」が生まれた。「私と同じように自分を責めている人がいたら」。そう思って、熊本をテーマにした計6曲を音楽ビデオにまとめることにした。これまでも作詞作曲し、自ら演奏した音楽ビデオを発表していたが、今回はプロによる演奏やダンス、ドローン撮影も加えた。

 「Rebirth」の映像は、自責の念を象徴する包帯で目隠しされた女性が最後に立ち上がり、目を開く。続編的な作品「新しい季節」では、益城町の冬の田んぼを明るい日差しが照らしている。

 一方、さわやかな「緑の再起」では、ドローンで撮影した阿蘇の草原がまばゆいほどに輝く。引退した熊本電鉄の人気車両「青ガエル」の現役時代の音を使った一曲もある。「県外の人にも興味を持ってほしい」と、大好きな江津湖や、肥薩おれんじ鉄道などの風景も盛り込んだ。

 「傷ついて終わりではなく、そこから新たに築き上げられていく過程を残したい。再生していく今の熊本を見てほしい」。野田さんは22日、熊本市でライブを開き、思いを込めた新作を披露する。(平井智子)

 ※ライブは午後4時から、熊本市中央区のルーテル大江教会で(大人前売り1500円など)。「Rebirth」「新しい季節」「緑の再起」は、市現代美術館で開催中の「アートパレード・パレード」展(8月12日まで)で展示中。

(2018年7月16日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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