空港アクセス 議論再燃 JR延伸、モノレール敷設… 民営化で熊本県が検討 多額の費用

 民営化を機に熊本空港利用者の増加が見込まれる中、熊本県は熊本市中心部との交通アクセス改善策の検討を10年ぶりに再開した。長年同空港はアクセスが弱点とされてきただけに、鉄道など公共交通機関の新設を含めた議論が熱を帯び始めた。

 「検討状況は」「手段はJR延伸か、モノレール整備か」。6月の県議会特別委員会。空港の運営権を争う三つの企業グループが出そろった直後とあって議員からは質問が相次いだ。

 県がアクセス整備のチャンスと位置付けるのは、2022年度に予定される新空港ターミナルビルの完成だ。アクセス関連は民営化の審査項目にも含まれており、近く始まる企業グループとの協議の中で、アクセス改善策の検討状況を示すスケジュールを描く。

■遅延が慢性化

 国の航空旅客動態調査によると、熊本空港利用者の交通手段は自家用車が約半数。公共交通ではリムジンバスが最多だが、朝夕の混雑時を中心に遅延や乗客の乗り残しが慢性化している。50~60分とされる市中心部との所要時間も同規模の仙台空港(鉄道で最短17分)などと比べて長いとされる。

 県は改善の選択肢として▽JR豊肥線の分岐・延伸▽熊本市中心部からのモノレール敷設▽熊本市電の延伸▽道路整備、などを想定。利用者数や事業費、定時性、所要時間などの比較検討を進めている。

■コスト懸念

 空港アクセスの改善策が検討されたのは今回が初めてではない。九州新幹線の全線開業時にもJR豊肥線の三里木駅から分岐し、空港までの9・8キロを新線で結ぶ案が浮上。だが事業費286億円に対して計画(1日5千人)の半数しか利用が見込めず、県は08年に事業を断念した。

 今回も定時性に優れることから、豊肥線の延伸を軸に検討が進むとみられる。ただ熊本地震の影響などもあり資材や人件費が高騰する中、建設費を巡って再び費用対効果が課題となる可能性が高い。

 さらに建設主体をはじめ、周辺の宅地開発や企業誘致の実現性など、検討項目は多岐にわたる。県幹部は「最適案を導くのは容易ではない」と漏らす。

■変わる玄関口

 それでも今回、県庁内からは「10年前とは環境が全く違う」(企画振興部)と強気の声が上がる。熊本空港の利用者はインバウンド(訪日外国人客)の増加を背景に17年度は過去最高の334万人を記録。「格安航空会社(LCC)の台頭で海外からの旅行需要は増え続けており、現状のアクセスではいずれパンクする」と必要性を強調する。

 県内では19年夏にバスターミナルとなる熊本市中心部の桜町再開発、21年春にはJR熊本駅の新ビルが完成予定。「それぞれの玄関口を有機的に結ぶことで交流人口の増加につながる。空港アクセスの強化は熊本の発展に不可欠」(熊本商工会議所の田川憲生会頭)など経済界からも待望論が上がる。

 蒲島郁夫知事は「50年、100年後の発展の礎」と空港アクセスの改善に強い意欲を示すものの、県議会には「最終的な判断はどれだけコストがかかるかだ」と慎重な声もある。これから整備が加速する熊本空港だが、アクセス改善の青写真を具体化するには、県民を含めた丁寧な議論が求められそうだ。(並松昭光)

(2018年7月16日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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