郷愁を感じる舞台で若武者が躍動…フレッシュオールスターゲーム現地リポート

フレッシュオールスターゲーム2018は青森県の「弘前はるか夢球場」で開催された【写真:(C)PLM】

光が印象的だった「弘前はるか夢球場」

 東京から新幹線で北上すること4時間あまり。プロ野球「フレッシュオールスターゲーム2018」の開催地となった青森は、東京よりも平均して5度ほど気温が低い。加えて、開催当日は曇り空とあって、現地の天候は不快に感じるものではなかった。ご当地選手にして、この日のイースタン先発を務めた種市篤暉投手(ロッテ)は、生まれ育った故郷について問われると「涼しい」と開口一番にコメントしているほどだ。出場選手も練習中から身体を動かしやすそうで、若手主体の両チームは初々しさを残しながらもリラックスした様子だった。

 試合開始時刻の18時が近づくにつれて和らぐ暑さとは対照的に、球場周辺とスタンドは人の気配と喧騒で熱気が膨れ上がっていく。未来のスターたちが一堂に会する「弘前はるか夢球場」が、お祭り特有の高揚感に包まれていった。

 夏本番の7月、地方球場で開催されるフレッシュオールスターに「ノスタルジー」的要素を期待するファンも多いだろう。だが、舞台となった「弘前はるか夢球場」の佇まいは、なかなか近代的なものだった。それもそのはず、楽天が2017年の1軍公式戦開催を目指し、2015年から改修を進めていたからだ。以前まで6700人だった市営球場の観客収容人数は、現在は1万4800人に増えた。球場正面から入るエントランスは2階まで吹き抜けになっており、3階は観客席につながる。3階には増設されたメインスタンドが“乗っかかる”形であり、弘前城と岩木山が合体したような外観だ。コンコースと増設されたメインスタンドはクリムゾンレッドに塗られ、楽天の本拠地を思わせる造りと雰囲気だった。

 今月上旬に楽天が主催試合を行うなどプロ野球仕様に変貌したスタジアムだが、開場は1979年だ。齢39年とあって、場内を一周すると、そこかしこに郷愁の香りが漂っていた。外野席は芝生で、後方がジョギングコースとなっており、子供が走り回ったりキャッチボールに興じたりしている。外周の飲食店からは、食欲を誘う匂いと煙が“飯テロ”とばかりに観客席を襲いかかる。いずれも、屋内ドーム球場が増えた現在のプロ野球では、なかなか見られなくなった光景だ。

 漆黒の夜空が屋外球場の照明が放つ光を助長させ、外周にはグラウンド上の熱気同様に光が溢れていた。1962年に開場し、わずか10年後に閉鎖された東京スタジアムの愛称は「光の球場」だったが、その時代にタイムスリップした錯覚に襲われた。当時のファンが見ていた景色を共有できた思いすらした。

第2打席で本塁打を放った日本ハム・清宮幸太郎(左から2人目)【写真:(C)PLM】

注目を一身に集めたハム清宮が第2打席に豪快アーチ

 この日の試合の主役はイースタンの清宮幸太郎内野手(日本ハム)だ。試合前に行われたサイン会でもファンの列はなかなか途切れず、最後の1人になっても対応を続ける。報道関係者からのリクエストも多いようで、練習時もせわしない。ひとたびバットを持てば大型ルーキーならではの存在感をたっぷりと醸し出すが、ベンチに戻る時には厚みのある身体をすぼめるようにして引き上げていく。周囲からの群を抜く注目度の高さは、スター候補生の宿命でもある。

 試合が始まり、名前がアナウンスされると、場内にいる誰もが背番号「21」の打席を追った。客席から一斉にスマートフォンとタブレットが掲げられ、「清宮だよー」「お前観るために来たんだー」など声援が飛ぶ。すると、球場入口は駆け足のファンで慌ただしくなり、ビールの売り子も足を止めて打席の行方を見守った。第2打席に放った豪快アーチで、優秀選手賞とともにスポーツニュースのトップを飾る注目をかっさらったことは、ご存じの通りだ。

 試合は、ウエスタンが24アウトのうち13個を三振で奪うなど、3-1で勝利を飾った。若い選手が1つ1つのプレーにみなぎらせた活力と笑顔が印象的で、両軍とも出場選手がポテンシャルの高さを見せつけた。試合前、視察に訪れていた野球日本代表「侍ジャパン」の稲葉篤紀監督(トップチームとU-23代表を兼任)が口にした「若さを前面に出して、のびのびやってくれたらいいのかなと思います」との思いにも応えられたのではないだろうか。

 今回の出場メンバーの中から、将来の日本代表選手はもちろん、今秋に行われるU-23ワールドカップに“飛び級”で出場する選手が現れる可能性もある。笑顔を真顔に変えて、世界を舞台に戦う姿にも期待したくなる一戦だった。

(Full-Count編集部)

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