かこさんありがとう 川崎でしのぶ会、絵本作家ら参列

 「ありがとう、かこ先生。あなたの遺志を引き継いでいきます」-。5月に92歳で亡くなった絵本作家で児童文化研究家のかこさとしさんをしのぶ会が16日、川崎市中原区の市市民ミュージアム映像ホールで開かれた。出版・児童文学関係者や知人ら約210人が参列し、子どもを第一に考え、その笑顔や将来のために600点を超す絵本を描き続けてきた作家の人生をしのんだ。

 「だるまちゃんとてんぐちゃん」などで知られるかこさんにとって川崎は、労働者の子どもたちを支援するセツルメント活動を行い、絵本作家を志すきっかけになった原点の地。ここで出会ったかつての子どもたちも参列した会場には、仕事部屋で笑顔を見せるかこさんの写真が映し出され、当時の子どもたちの写真や300点を超す絵本が飾られた。

 前東京理科大学学長の藤嶋昭さんら5人が思い出を語り、絵本作家の長野ヒデ子さんは「子どもを呼ぶとき『こどもさん』と言われる。尊厳を持って子どもと向き合ってくださった」と振り返った。かこさんの作品に触れて絵本作家の道を選んだというヨシタケシンスケさんも「自分で成長し、考えられる大人になってほしいと思って常に作品を描かれていた」とたたえた。

 献花を前に長女の鈴木万里さんは「作品『未来のだるまちゃんへ』は実は遺書です。未来の子どもさんに伝えたいメッセージ」と明かしながら、「かこ作品が皆さんの心に届き、生き続けていることに感謝しています」と感謝した。

 同ミュージアムでは、かこさんが生前、楽しみにしていた企画展「かこさとしのひみつ展-だるまちゃんとさがしにいこう-」(9月9日まで)を開催中。かこさんに感謝を伝えるコーナーも設置されており「おかげで本が好きになりました」「かこさんの絵本を未来の子どもたちにも伝えたい」などとの言葉が寄せられていた。

思い出などが語られたかこさとしさんをしのぶ会=川崎市市民ミュージアム

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