ミニマリスト

 月5千円の小遣いをもらい、出納帳に1円単位で記入しながら日常を過ごしているという20代の若者に出会った▲限られた5千円をどう使うか。食べたいおやつを買うか我慢するか。100円と200円のアイスの差は何か。物の価値を真剣に考える。それでやっていける彼なら、将来の収入がどれくらいでも、立派に経済的自立ができそうだ▲物欲をあまり持たないという彼が、シンパシーを抱くのはミニマリスト。必要最小限の物しか持たないライフスタイルを選んだ人を指す▲衣類や家具など、持っている物を減らすことで、本当に価値あるものは何か見つめ直し、自分の人生に向き合おうとしている人らしい。先日亡くなった生活哲学家の辰巳渚さんが、著書「ミニマリストという生き方」の中で紹介していた▲お金さえあればどんな物でも買える現代。ぜいたく品であれ日用品であれ、物を買うためにあくせくと働きづめの人はいるだろう。だがもし、自分には最小限の物があれば十分だと気付いてしまったら▲人生において働く意味を問い直し、無理して働くより他に大切なことがあると、あえて低収入でも構わない生き方を選ぶことがあるかもしれない。収入と支出のバランスが取れていれば、収入が高かろうと低かろうと問題はないだろう。その人の生き方だ。(泉)

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