金属行人(7月17日付)

 鉄鋼・非鉄金属業界の企業は立地する街・地域と共に発展し、いわゆる企業城下町となっているところが少なくない。伸銅品などを製造する古河電気工業の日光事業所もその一つ。明治39年(1906年)に日光電気精銅所として創業し、天皇陛下が民間企業に行幸された第一号の地であることはあまり知られていない。当時の所長室が天皇・皇后両陛下の休息場所として使われ、今は工場内に記念館として残る▼あまり知られていないという点では、日光事業所で使われている電気は、ほぼ100%クリーンエネルギー(再生可能エネルギー)ということもそう。子会社の古河日光発電が近くの中禅寺湖から流れ落ちる水を利用して水力発電を行う▼自動車メーカーでは最近、車1台つくるのにトータルで二酸化炭素がどれだけ発生したかを強く意識する。いわゆるLCA(ライフサイクルアセスメント)の観点だ。走行時に発生するCO2排出量だけでなく、車の素材である鉄・アルミ・銅をつくるのに、どれだけCO2が使われたのか▼創業者が約100年前に、足尾銅山で採れる銅を製錬するのに必要な電気確保のために発電所をつくった。それが今の時代に別の形で強みとなっていることに驚く。

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