「プーチン氏からのプレゼントに盗聴器」疑った米当局

By 太田清

16日、フィンランド・ヘルシンキでの首脳会談後の共同記者会見で、ロシアのプーチン大統領からサッカーボールを受け取るトランプ米大統領(ロイター=共同)

 トランプ米大統領とプーチン・ロシア大統領の米ロ首脳会談が16日、フィンランドのヘルシンキで行われた。「遅刻魔」のプーチン氏の到着が遅れ、トランプ氏が1時間近く待ちぼうけを食わされるハプニングがあったものの、通訳だけを交えた直接会談は約2時間にわたった。 

 シリア情勢や核軍縮問題以上に関心を集めたのが、米大統領選へのロシア介入疑惑に対する両首脳の対応だったが、トランプ氏はロシアの介入を非難するどころか、会談後の記者会見で米中央情報局(CIA)など自国の情報機関の結論に疑問を呈した上で「プーチン氏は強く、説得力を持って(疑惑を)否定した」とプーチン氏の肩を持つ異例の展開に。これに対し、野党民主党はもちろん、与党共和党からすらも「悲劇的な間違い」(マケイン上院議員)、「大統領による最も恥ずべき行いの一つ」(コーカー上院外交委員長)と批判の声が相次いだ。 

 こうした中、トランプ氏がいかにプーチン氏への「信頼」を表明しようとも、米国の情報機関がロシア側を全く信用していないことを如実に示すエピソードがあった。トランプ氏は首脳会談冒頭で、ロシアで閉幕したサッカー・ワールドカップ(W杯)の成功を真っ先に祝福。プーチン大統領はこれに呼応するかのように共同会見でW杯のボールをトランプ米大統領にプレゼント。多数の報道陣が見守る中、プーチン氏が「ボールはいま、米国のコートに移った」と言ってボールを渡すと、受け取ったトランプ氏は「息子のバロンにあげよう」と言いながら、目の前にいたメラニア夫人の方へ軽く放り投げた。米国は2026年にカナダなどとW杯を共催する。 

 ところが、ボールはそのままではバロン君には渡らなかった。トランプ大統領のシークレットーサービス要員がすぐにボールを受け取ると、会談が行われたフィンランド大統領官邸の外に設けられたスキャナーにかけ、不審物が仕組まれていないかを確認したのだ。米NBCテレビのビル・ニーリー記者が目撃し、ツイッターで明らかにした。 

 共和党のリンゼー・グラム上院議員もツイッターで「もし私が大統領だったら、サッカーボールの中に盗聴器が仕込まれていないか調べるだろう。そのまま、ホワイトハウスの中に持ち込ませることはしない」と、トランプ氏に“警告”した。 

 折しも、ロシア介入疑惑捜査では、米連邦大陪審が13日、民主党陣営にハッキングしたとしてロシア情報機関の当時の当局者ら12人を起訴したばかり。また米司法省は16日、首都ワシントン在住のロシア人のマリア・ブッティナ容疑者(29)が米国内でスパイ活動をした疑いで15日に米当局に逮捕されたと発表。ブッティナ容疑者はロシア政府高官の指示を受け、2015年ごろから17年にかけて米国人政治家と関係を築くため、米国の政治団体に潜り込むなどしていた疑いが持たれている。トランプ氏が何と言おうと、米ロ関の相互不信の根深さはまったく解消されていない。 (共同通信=太田清)

© 一般社団法人共同通信社