WTCR第6戦:計6台に最大ブースト圧違反の波乱。ホンダ陣営の抗議でレース結果は暫定扱いに

 WTCR世界ツーリングカー・カップは7月13~16日、スロバキアで第6ラウンドが行われ、レース1はペペ・オリオラ(セアト・クプラTCR)が優勝。レース2~3はガブリエル・タルキーニ(ヒュンダイi30 N TCR)、ノルベルト・ミケリス(ヒュンダイi30 N TCR)のヒュンダイ勢がトップチェッカーを受けた。なお、予選ではヒュンダイ勢とホンダ勢に最大ブースト圧違反の裁定が下っており、このうちホンダ勢は裁定に抗議したため、レース結果は暫定扱いとなっている。

 WTCC世界ツーリングカー選手権の後継として2018年に発足したWTCR。シリーズ第6戦は当初アルゼンチンでの開催が予定されていたが、同国の経済状況が悪化したことを受けて開催地が変更。中央ヨーロッパにあるスロバキアの首都、ブラチスラヴァ近郊のスロバキア・リンクで争われた。

 14日(土)のレース1に向けて、13日(金)夕方に行われた予選1回目では好調のタルキーニが最速タイムを記録。2番手にミケリス、3番手にイバン・ミューラー(ヒュンダイi30 N TCR)が入り、ヒュンダイがトップ3を独占する結果となった。

 しかし、この予選1回目終了後の車検で予選2~3番手に入ったミケリス、ミューラー、そして予選7番手のテッド・ビョーク(ヒュンダイi30 N TCR)の3台に最大ブースト圧違反が発覚し、予選タイムが抹消に。

 この結果、レース1の2番手グリッドはオーレリアン・コンテ(プジョー308 TCR)、3番手グリッドはオリオラがつけた。

 また、予選セッションではエステバン・グエリエリ(ホンダ・シビック・タイプR TCR)やトム・コロネル(ホンダ・シビック・タイプR TCR)など5名のドライバーがライバルのアタックを妨害した可能性があるとされ審議が行われたものの、こちらはペナルティなどは下されなかった。

■レース1はオリオラが逃げ切り今季初優勝

 セーフティカー導入により11周に延長されたレース1では、スタートでコンテがトップに浮上。2番手にオリオラ、3番手にジャン-カール・ベルネイ(アウディRS3 LMS)が続いていく。

 トップに浮上したコンテだったが思うようにペースを上げられず、2周目にはオリオラ、ベルネイに交わされて3番手にポジションダウン。その翌周にはタルキーニにもオーバーテイクを許してしまう。

 コンテを交わして首位に浮上した3周目にファステストタイムを記録する猛プッシュでギャップを広げにかかったが、5周目にフレデリック・バービッシュ(アウディRS3 LMS)が10コーナーでマシンを止めたためセーフティカーが導入。ギャップが一度リセットされる。

レース1を制したペペ・オリオラ(セアト・クプラTCR)

 車両回収作業を終えてレースは7周目に再開。オリオラはこのリスタート直前のバックストレートで隊列を乱すような挙動をしたとしてスチュワードから警告を受けたものの、ペナルティなどはなし。そのまま逃げ切って今季初優勝を飾った。

 2位はベルネイ、3位はタルキーニが続いている。

■ノックアウト予選はミケリスが制圧。ホンダは最大ブースト圧違反裁定に抗議

 レース2、3のグリッドを決めるノックアウト予選では、前日の予選1回目で最大ブースト圧違反によりタイムが抹消されたミケリスが快走。Q1~3の全セッションでトップタイムをマークして最終レース3のポールを掴み取った。

 Q2のトップ10リバースグリッドとなるレース2のポールはは、10番手タイムを記録したノルベルト・ナギー(セアト・クプラTCR)が手にしている。

 なお予選終了後、今度はベンジャミン・レッスン、トム・コロネル、エステバン・グエリエリのホンダ・シビック・タイプR TCRに最大ブースト圧違反が発覚したため、予選タイム抹消の裁定が下され、スチュワードは最後尾グリッドからのスタートを言い渡した。

 しかし、チームはこの裁定に抗議したため、予選とレース2~3の結果は暫定扱いに。そのためレース2~3は予選暫定結果のままスタートすることになった。

■レース2は1周目でトップにたったタルキーニ独走

 14日の現地19時スタート予定だったレース2は、上述したホンダ車の調査に時間がかかったこと、これによりチームにマシンが返却されるのが遅れたことなどから、予定より遅れて幕が開けた。

レース2では序盤にトップに立ったタルキーニが独走優勝を飾った

 スタートではポールシッターのナギーと2番手スタートのタルキーニが2台横並びで1コーナーへ。続く2コーナーへのアプローチではイン側につけていたタルキーニがアドバンテージを得てオーバーテイク成功。そのまま逃げ切りを図る。

 最終的にタルキーニは9周のレースで2位に対し、2.150秒もの大量リードを築く独走でトップチェッカー。2位にはレース終盤、ミュラーからの猛攻を防ぎきったナギーが獲得し、自身初、チームにとっては2015年以来となる表彰台を持ち帰った。

■レース3でランキング上位陣がリタイアの波乱。ミケリスがポール・トゥ・ウィン

 15日(日)のレース3では、スタートでポールシッターのミケリスが2番手コンテを抑えて1コーナーをクリア。そのまま独走体勢構築を図る。

 しかし、その後方ではミケリスのチームメイトであるタルキーニが3コーナーへの進入でレッスンのリヤに接触。これによりスピン状態に陥ったレッスンのマシンはグエリエリ、ジョン・フィリッピ(セアト・クプラTCR)を巻き込む形でクラッシュして、一気に4台がリタイアする事態に。また、このアクシデントを受けてセーフティカーが導入された。

 レースは5周目に再開されたが、直後の13コーナーで今度はミューラーが操るヒュンダイi30 N TCRの左フロントタイヤが脱輪。コントロールを失ったミューラーのマシンはグラベル上でストップしてリタイアを余儀なくされ、タルキーニとミューラーというポイントランキング上位陣がノーポイントに終わる事態に。

レース3を制したノルベルト・ミケリス(ヒュンダイi30 N TCR)

 後方でのアクシデントを尻目に、トップを走るミケリスは快走をみせてチェッカー。このレース3だけで大量30ポイントを獲得し、ランキングトップのタルキーニと26点差まで詰め寄ってみせた。

 レース3の2位表彰台はコンテが獲得。3位にはバービッシュが入った。ブース圧違反裁定に抗議を行ったホンダ勢のなかではコロネルが8位につけたが、このレース結果はFIAによる審議が終了するまで暫定扱いとなる。

 2018年のWTCRは、このスロバキア戦を終えて約2カ月のサマーブレイクに突入。シーズンは9月29~30日、中国・寧波の寧波国際サーキットで再開される。

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