長崎東、30年ぶり8強 前年覇者を攻守で上回る

 九回2死一塁、青空に高く打ち上がった白球を中堅岩永が、しっかりとグラブに収める。瞬間、一塁側スタンドの真っ赤なメガホンが大きく揺れた。長崎東が前年覇者の波佐見を攻守で上回り、30年ぶりに準々決勝へ進出。山口監督は「相手を意識することなく、自分たちの野球をやってくれた。応援の力もすごかった」と充実感を漂わせた。
 平日に練習できるのは2時間弱。グラウンドも他の運動部との共有で、打撃練習はバックネットに向かって打ち、シートノックも限られている。そんな環境でも、主将の有光が「練習合間の全力疾走や自主練、朝練など1分、1秒の時間を増やそうと取り組んできた」と言うように、OBらの指導も受けながら、地道に力と技を磨いてきた。
 チームを勢いづけたのは1年冬から右肩などの故障に悩み続けた背番号「10」の松永。波佐見とは前哨戦のNHK杯でも戦い、3本塁打を浴びたが「(被安打は合計4で)打たれたという感じはなかった」と落ち着いてマウンドに上がった。
 低めにボールを集めて凡打の山を築き、それに応えるように打線も次々に快音を響かせて2桁安打。テーマに掲げる「必笑(ひっしょう)」も貫いて終始盛り上がり、試合の流れを手放さなかった。
 チームが見据えるのは県勢で戦後初めて土を踏んで以来、69年間遠ざかっている甲子園。次も強打の海星が待ち構えるが、有光は「自信を持って気持ちで負けず、チャレンジャーとしてぶつかるだけ」とシード校連破を誓った。

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