受動喫煙対策、先行の神奈川県条例に影響は

◆改正法案近く成立、規制は厳格化

 受動喫煙対策を強化する健康増進法改正案が、近く成立する。国会審議では規制の緩さが指摘されているものの、神奈川県が全国に先駆けて制定した受動喫煙防止条例に比べると「相当厳しい」(県担当者)内容だ。優先せざるを得ない法との整合性を巡り、県条例は見直しの必要性を迫られるのか-。2010年の施行から8年、たばこ対策の“切り札”としてきた条例の実効性が改めて問われている。

 「一見すると同じだが、実は大幅に違う。条例が骨抜きになりかねない」。実質的に規制強化となる法成立を見据え、県側が最も気をもむのは規制の目玉である飲食店の扱いだ。

 いずれも客席面積100平方メートル以下の小規模店は、屋内全面禁煙が努力義務にとどまる「特例」扱い。ところが法は「既存店」に限っており、施行後に業態や経営者が変わるなどした場合は認められなくなる。飲食店は2年間で全体の2割弱が入れ替わるとされ、県内でも全面禁煙の義務を課せられる小規模店が増えていく見通しだ。

 また、条例で対象外としている「風営法に該当する施設」も、法と対応が分かれる。現在は喫煙が認められているパチンコ店をはじめバーやスナックなども、100平方メートル以上なら今後は原則禁煙に。県担当者は「県内でも多いパチンコ店などは、規制の影響が避けられない」として動向を注視していく考えだ。

 一方、違反者に科せられる罰則の過料は、法と条例で最大15倍の開きがある。禁煙エリアに灰皿を置くなど義務を守らない施設管理者は、条例が5万円以下で法は50万円以下。禁煙エリアでたばこを吸った人には、2万円以下を科す条例に対し法は30万円以下と定めている。

 ただ、県がこれまでに罰則を適用したケースはなく、施設への8万件近くに上る戸別訪問で「嫌われるほど徹底した指導」を重ねてきた。今後は政令市や保健所設置市に指導権限が移るため、「抑止力」ともなる罰則の運用は各自治体の姿勢に委ねられる形になる。

 参院の審議では、県議会との綱引きで制定にこぎつけた松沢成文前知事(現希望の党代表)から、面積要件設定が「大失敗だった」との声も上がった県条例。来年度は3年に1度の見直しを検討する年に当たり、県は「法成立後に政令などで決まる細則を見定めた上で検討を始めたい」としている。

 改正法は、東京五輪・パラリンピック前の20年4月に全面施行される見通しだ。

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