「DVD=3」 ノラ・ジョーンズ『ライヴ・アット・ロニー・スコッツ』 ロンドンの名門ジャズクラブで開催された、親密で濃厚なライブ映像

ノラ・ジョーンズ『ライヴ・アット・ロニー・スコッツ』

 2002年、デビュー・アルバム『ノラ・ジョーンズ(原題: Come Away With Me)』で彗星の如く現れ、現代のジャズシーンを語る上で欠かすことのできない、というか、日本ではジャズの歴史と今をつなぐ架け橋のような存在となっている(と思う)、ノラ・ジョーンズ。本作は、ニューヨークを拠点に活動を続けている彼女がロンドンの名門ジャズ・クラブ「ロニー・スコッツ」で行った2017年のライブの模様を収録した映像作品だ。

 大スターの彼女には超異例とも言えるキャパシティの小さな会場での公演。ぎゅっと濃縮された彼女の音が、その熱が、テレビのモニターからもしっかりと伝わってくる。そんな会場だからだろうか、小さな音に反応するようなそぶりを見せたり、ラフなトークをしたりと、彼女の素顔を感じる姿が見られるのも、本作の大きな魅力だ。

 そしてもう一つ。歌詞カードが付いているDVDに好感を覚える、と、前にもここで書いたかもしれない。本作はまさにそれで、しかも全曲の対訳までついている。耳でしか感じていなかった彼女の楽曲の言葉に触れ、心地よい音の波の中に、彼女の繊細な心の機微が込められていることを知る。この歌詞を読んでまた、彼女のライブでのナイーブな挙動に合点がいくような……。一本まるごとで楽しめる快作だった。

(ユニバーサル・ミュージック・3500円+税)=玉木美企子

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