【新社長インタビュー】〈共英製鋼・廣冨靖以氏〉「100年企業」目指し基盤強化 次代を支える人材育成

――共英製鋼入社のいきさつから。

 「銀行時代、1999年に中山鋼業が会社更生法適用申請をしたが、当時、共英製鋼と合同製鉄が支援に動き、当時の高島浩一会長、高島秀一郎社長、高島成光副社長など共英経営陣と共に銀行担当として一緒に働かせていただいた。そこからの縁。その後、折々にお会いする機会があり、2014年に入社した」

――入社後は。

 「主に海外事業展開のお手伝いをさせてもらった。ベトナム北部でのベトナム・イタリー・スチール(VIS)買収とキョウエイ・スチール・ベトナム(KSVC)の一貫工場建設計画中止などベトナム北部事業の再構築、ベトナム南部のビナ・キョウエイ・スチール(VKS)に連動する港湾事業のチー・バイ・インターナショナル・ポート(TVP)の立ち上げ、米テキサス州のビントン・スチールの買収に関わってきた。共英経営陣の成長戦略に向けての決断とバックアップがあったからできた仕事で、『100年企業』に向けた成長戦略基盤が確保できたと改めて感謝している」

共英製鋼・廣冨社長

――共英製鋼をどんな会社にしていくか。

 「創業以来厳しい時期もあったが、何とか乗り越えて昨年70周年を迎えた。次は『100年企業』を目指していく。この4~5年で構築してきた海外事業、枚方、山口、名古屋の各事業所と子会社・関東スチールの国内鉄鋼事業、環境リサイクル事業に加え、買収した鋳物メーカーの吉年などグループ会社も数年前の8社から16社に増えた。こうした事業基盤をベースに、(1)海外事業の高収益化(2)国内事業の競争力強化(3)グループ総合力の発揮と事業の多角化(4)現場を含め次代の共英を支える人材づくり―など100年企業に向けた基盤強化が使命と考えている。高島秀一郎会長がCEO。私はCOOとしての役割を担っていく」

――具体的には。

 「共英はこの5年間で650億円を投資してきた。海外では企業買収やVKS製鋼圧延一貫化体制も含めて400億円強、国内で省エネや事業基盤整備など約220億円を投資した。これら事業投資の回収に力を入れ利益率を高めていきたい。当社のROEは前期で2・5%。過去には6%台もある。早期に5~6%に持っていきたい。中期経営計画を策定し目標を明確にして取り組んでいくことも考えている」

――海外事業の高収益化では。

 「まずベトナム北部事業の強化を進める。鉄筋単圧のKSVCの収益を、買収したVISとの連携強化により安定化させたい。VISはハイフォン工場で製鋼(年45万トン)、フンエン工場で圧延(同30万トン)と製鋼と圧延が分離しており非効率。製鋼圧延一貫化も視野に入れた生産能力向上を検討しなければならない。これを具体化させ、KSVCの年30万トンと合わせて北部鉄筋市場で一定のマーケットシェア(10%以上)を取っていきたい」

 「南部のVKSは年産80万~90万トンと安定してきた。TVP社と連携し、さらに収益を上げる。米国のビントンは買収当時の年産17万トンから今期は22万トンに増えそうだ。製鋼能力は30万トンある。圧延能力を何とか30万トンに持っていきたい。国内もコスト競争力をさらに高めて同業他社と比較優位の状況を確立していく」

――人材づくりでは。

 「真面目な社員が多く、現場が強い。それに高島浩一氏の時代からチャレンジ精神にあふれ、また『運のある』メーカーという印象だ。経営者が力を発揮して社員を引っ張り、人材も育った。78年前後から15年間定期採用ができなかったが、その後復活した定期採用組が50歳前後と次代を担う年齢になってきた。こうした社員の育成や、現場も含めた新人社員の教育・研修をしっかりやって、次代につなげていきたい」(小林 利雄)

プロフィール

 銀行では営業畑が長く、企業の育成投資や倒産場面にも立ち会ってきた。「きょうの自分は、明日の自分でない」。良いときも悪いときも明日を信じて努力を重ねることを肝に銘じてきた。

 都立青山高ではラグビーで花園を目指し、大学では「足元にも及ばない」と諦めたが、大西鉄之祐監督の「闘争の倫理」は現在も座右の書。休日はゴルフや読書を楽しむ。

 廣冨 靖以氏(ひろとみ・やすゆき)78年(昭53)早大政経卒、大和銀行(現りそな銀行)入行。久留米支店長、本店営業第二部長、企画部長、03年執行役大阪営業部長兼大阪中央営業部長、同年10月常務執行役、05年専務執行役員、07年取締役兼専務執行役員、10年代表取締役副社長兼執行役員。14年共英製鋼顧問、同年6月取締役副社長執行役員、18年6月社長。54年(昭29)6月生まれ、64歳。広島県出身。

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