潜伏キリシタン遺産登録 「世界唯一の宗教的伝統」 大浦天主堂で特別講演会

 「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」(長崎、熊本の12資産)の世界文化遺産登録を記念した特別講演会(カトリック長崎大司教区主催)が15日、資産の一つ、長崎市南山手町の大浦天主堂であり、登録に携わった県職員やカトリックの神父が、遺産の価値や意義を解説した。
 約110人が参加。県文化観光国際部の岩田正嗣次長は遺産の価値について、「禁教の中で仏教や神道を装い、他の住民とうまく折り合いを付け、ひそかに信仰を続けた。日本独自の(キリスト教の)形であり、世界にひとつしかない長崎・天草の宗教的伝統」と説明した。
 長崎純心大教授の古巣馨(かおる)神父は「カトリック教会から見た意義」のテーマで解説。「現代は7、8割の日本人が無宗教。宗教が人生の支えになり、癒やしを与える役割を果たせなくなっている」と指摘。「(遺産への)巡礼や観光を手掛かりに、自分にとって宗教とは何なのかと問い掛ける機会になってほしい」と期待した。
 会場からは「資産の追加登録を目指さないのか」と質問が出た。岩田氏は「12資産は潜伏して信仰を続けた集落などの代表事例。ユネスコ世界遺産委員会も資産に過不足はないと認めた」と説明。「今後も調査は続ける。現在と違う新しい価値を見いだせれば可能性はある」としたが、現時点で資産の追加登録は困難との考えを示した。

講演する古巣神父=長崎市、大浦天主堂

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