「交通系カード」決済、熊本のタクシー業界で導入 好評も設備投資の負担重く

一部車両にカード決済端末機を導入しているミハナタクシー。9月にも熊本都市圏を走る全車への導入を計画している=熊本市

 熊本県内のタクシー業界で、クレジットカードのほか、「Suica(スイカ)」、「 #(スゴカ)」など交通系ICカードの決済端末を導入する動きが出てきた。決済の選択肢を増やして利便性を高め、利用客を獲得する狙いだが、導入には多額の設備投資が必要で、簡単には普及が進まない現状もある。

 「最近はクレジットカードより交通系ICカードの利用が増えた。県外の出張客や若い旅行客が多い」。今月上旬、JR熊本駅白川口(東口)で客待ちしていた熊本駅構内タクシーの乗務員(64)が教えてくれた。

 同社は、約20年前からクレジット決済を開始。5年前に交通系ICカード決済を全車両に導入した。稲葉吉彦取締役部長(30)は「駅を営業拠点とし、JRと一体的な輸送を担うのに、交通系ICカード決済の導入は必然だった」と話す。

 県内大手ミハナタクシーも、9月にもグループ3社の125台にカード決済用端末を導入予定だ。20台に先行導入していたが、「台数が少なく、すぐに配車できないこともあったため、熊本都市圏を走る全車への導入を決めた」と小山剛司副社長(53)。

 全国ハイヤー・タクシー連合会(全タク連、東京)によると、県内の法人タクシーの導入率(車両ベース、3月末現在)はクレジット16%、交通系IC10%。5年前に比べてそれぞれ10ポイント近く増えたが、全国平均(クレジット60%、交通系20%)を大きく下回る。

 出張で熊本市を訪れた大阪市の会社員男性(38)は「普段、現金を持ち歩くことはほとんどない。熊本のタクシーもカード決済が増えてほしい」。

 県内各社がカード決済導入に二の足を踏む背景には、設備投資の問題がある。

 ミハナグループの場合、全車に端末を整備するにはメーター更新費も含め4千万円近くが必要といい、小山副社長は「本業で利益がほぼ出ない中、大変な投資」と苦笑する。

 費用対効果もネックの一つだ。県タクシー協会によると、マイカー依存度の高い県内では「客層の中心は繁華街での飲み会帰りや通院のお年寄り」。ビジネス・観光利用の多いJR駅に乗り入れるタクシー以外はニーズが少ないのも導入が進まない理由とみている。

 中国などで急速に普及しているQRコード決済などへの対応は、さらに遅れている。

 ただ、2020年に東京五輪を控え、県内もここ数年の間に熊本駅を含む再開発や国際的なスポーツイベントがめじろ押し。インバウンド(訪日外国人)を含め、熊本を訪れる人の増加が見込まれており、対策は急務だ。

 人吉タクシー(人吉市)が、専用端末よりコストが安く、翻訳機能もあるスマートフォン決済システムを導入するなど、インバウンド対応もにらんだ新たな取り組みも一部で始まっている。

 全タク連は、初期投資に掛かる企業の負担を軽減しようと、決済端末や多言語対応のシステム導入費用の助成を国に働き掛けているという。県タクシー協会は「輸送手段として選ばれるため、業界も変わらないといけない時代にきている」と力を込める。(川崎浩平)

(2018年7月18日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

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