乳がん再発リスク 遺伝子解析で特徴把握

 乳がんは再発すると、治癒が非常に困難なため、再発を防ぐ治療がとても大切です。治療法の選択には、がん細胞の増殖能力や再発のしやすさなどの特徴を、遺伝子解析で把握する手法が登場しています。熊本中央病院(熊本市南区田井島)の村上敬一医師(乳腺・内分泌外科部長)に診断方法について聞きました。(高本文明)

-乳がんは、女性ホルモンの影響が大きいそうですね。

 「乳がんの発症には、エストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンや生活習慣、遺伝子などが関わっています。がん細胞が女性ホルモンの刺激を受けて増殖する可能性があることをホルモン感受性といい、ホルモン感受性のがん細胞は、細胞表面のホルモン受容体と女性ホルモンが結合することで、増殖していきます。ホルモン受容体があれば、ホルモン受容体陽性とされ、女性ホルモンの働きを抑えて、がん細胞の増殖を抑制するホルモン療法の対象となります」 

 「がん遺伝子のHER2(ハーツー)が発現しているタイプは悪性度が高いのですが、HER2を狙って働きを阻害する分子標的治療薬を使います。ホルモン受容体もHER2も陰性のトリプルネガティブというタイプでは、通常、抗がん剤による化学療法を行います」 

-ホルモン療法の対象となる乳がんは多いのですか。

 「乳がん全体のうち、女性ホルモンの影響を受けるタイプは7~8割を占めています。このタイプは、ホルモン療法との相性が良い一方で、全般的に化学療法との相性はそれほど良くありません。しかし、このタイプの一部には、程度が軽そうに見えても、『がん細胞が増殖する能力が高かったり、再発するリスクが高かったりする乳がん』が存在し、これにはホルモン療法だけではなく、化学療法を追加することが望ましいと考えられています」

-ホルモン感受性の有無などは、どのように検査しますか。 

 「通常は乳がん組織を4種類の免疫染色による病理検査で判断します。ただ、これだけでは、『増殖能が高かったり、再発するリスクが高かったりする乳がん』を厳密に探し出すことは難しく、欧米を中心に多くの国々は、がん細胞の遺伝子を調べて再発リスクを判定する多遺伝子アッセイという方法を採用しています。残念ながら、わが国では保険適用外で、40万円ほどの自費診療となるため、なかなか利用できないのが現状です」

-ほかに手法はありますか。

 「当院では、2017年9月、『Curebest 95GC Breast(キュアベスト95ジーシーブレスト)』による乳がんのリスク診断を、県内で初めて導入しました。手術で切除した乳がん組織に含まれる95種類の遺伝子を解析し、再発する可能性が高いか低いかなどを判断できます。大阪大を中心に国内で独自に開発された手法で、費用も20万円(税別)と海外の方法に比べ半額ほどで利用できます」

-どのような患者さんが対象となりますか。 

 「エストロゲン受容体が陽性である、がんが発症した部位から周辺にも広がっている浸潤状態である、リンパ節への転移がなく比較的早期である、手術前に薬物療法を受けていない-などの条件があります。こうした患者さんに化学療法が必要かどうかを調べることができるようになりました」 

-導入の効果はいかがですか。

 「まだ実例は少ないのですが、『頑張って抗がん剤治療を受けよう』『抗がん剤をしないでも安心』などと、自分の決心、安心にもつながり、納得して前向きに治療や仕事に取り組んでいただくことができています。患者さんが治療法の選択に迷わないよう、自己決定の支援に役立てていきます」

(2018年7月18日付 熊本日日新聞夕刊掲載)

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