ワールドカップ2018の総まとめ、全試合を追った有識者の「大会ベストイレブン」はこれだ!

四年に一度行われる世界の祭典が閉幕した。

サッカーを愛する者はもちろんのこと、これまでそこまでサッカーという存在に関心を抱いていたいなかった者にとってもこの一カ月間は非日常的な時間が流れていたのではないだろうか。

海外の日本代表最新情報、Jリーグ超ゴールはこちら

周知のとおり、優勝国はフランスとなった。

グループリーグでは不安の残る戦いぶりを見せてしまったが、大会中に戦術スタイルや選手配置をチューニングし、試合を追うごとにチーム力を増強することに成功した結果の末であった。

だが、今大会における主役は何もフランス代表の面々だけではない。

「世界王者」という栄誉こそ手中に収められなかったが、圧倒的な存在感を見せた選手は数多く登場した。おそらく、あなたの胸の中にも独自の「マイベストイレブン」が存在するはずだ。

そこで今回は、大会を通じて印象的なパフォーマンスを発揮した11人(プラス次点)を筆者自らが行った「全試合採点」の統計も元に、独断と偏見で選出した。

【関連記事】選手採点で選ぶグループリーグベストイレブン

GK部門

ティボー・クルトワ(ベルギー)

FIFAが選出する「最優秀ゴールキーパー賞」を受賞したが、ティボー・クルトワの存在は大会を通して際立っていた。

日本戦で立て続けに失点を喫した「魔の三分間」はマイナス材料ではあったが、その試合でもあの時間帯を除けば安定した働きを披露。後半アディショナルタイムの大逆転弾も、彼だからこそ可能なハイボールキャッチと冷静なスローが起点によるものだったことは改めて説明するまでもない。

続くブラジル戦でもサッカー王国の猛攻を凌ぐセービングを幾度となく披露し、2-1の勝利に貢献。準決勝のフランス戦ではサミュエル・ウンティティにヘディングゴールを許して、接戦の末に惜しくも破れたが、それ以上に決定機を抑えたパフォーマンスを評価するべきだろう。

そして、次点は最後尾からチームを優勝に導いただけではなく、主将という大役も全うしたフランスのウーゴ・ロリスとした。

決勝戦では本人も映像を見返すことを避けたくなるような失態からマリオ・マンジュキッチにゴールを奪われ、ベスト16でも複数失点を喫するなど、たしかにパフォーマンス自体には波があった。

しかし、彼の存在は「シュートを防ぐ」というシーン以外でもチームに大きく貢献していたことは間違いないだろう。

CB部門

ラファエル・ヴァラン(フランス)

ドマゴイ・ヴィダ(クロアチア)

堅牢な守備からのカウンターがチーム最大の武器となっていた今大会のフランスだったが、それを実現できたのはセンターバックにラファエル・ヴァランがDFラインに君臨し続けたからだ。

グループリーグの第一、二戦目は目立たなかったが、三戦目以降からアクセル全開。とりわけベスト8以降は“ほぼパーフェクト”と称賛するべきディフェンスを続け、同様にフランス自慢の武器であるセットプレーの場面では、ターゲットとして相手守備陣に脅威を与えた。

クロアチアとの決勝戦の一点目は記録上はオウンゴールであったが、試合を大きく動かしたあの一撃は、アントワーヌ・グリーズマンのキックに絶妙のタイミングで飛び込んだヴァランなしでは起こり得なかっただろう。

そして、もう一人のセンターバックには、クロアチアを魂の守備で支えたドマゴイ・ヴィダとした。

正直、大会前に彼がここまで名を売るとは誰もいなかっただろう。欧州予選では全試合に出場した守備の要ではあったが、世界レベルのアタッカー陣相手では実力不足を露呈するのではないかと思われていたからだ。

しかし、蓋を開けてみたら、良い意味で期待を裏切ってくれた。

「ボールに行く時」と「引く時」を正確に使い分け、空中戦でも自分の背丈以上の選手をもろともしない競り合いで何度も制した。今大会の彼らは、観る者の魂を揺さぶる集団であったが、その権化と言うべき存在がヴィダであったと断言しても差し支えないだろう。

なお、次点は整備されたスウェーデンの守備組織を統率したアンドレアス・グランクヴィスト。さらに、「割り切ったサッカー」を実践するウルグアイにおいて重要な役割を担ったディエゴ・ゴディンを選んだ。共にキャプテンマークを巻いていた選手となったが、それは偶然ではないだろう。やはり、「勝ち上がるチーム」には守備のリーダーが必須であると再確認させられた者は筆者だけではないはずだ。

RB部門

キーラン・トリッピアー(イングランド)

フォーメーションを考えると「3-5-2」のウィングバックで起用されていた彼をピックアップするのは不適格かもしれない。だが、多少強引にでもピックアップする価値があるほど、キーラン・トリッピアーの貢献度は群を抜いていた。

「セットプレーありき」とも揶揄されることも少なくなかった今大会のイングランド代表だが、それでも勝ち進めたのは高精度のプレイスキックでチャンスを創出し続けたトリッピアーの右足があったからこそ。また、セットプレー以外でも抜群の走力を活かして右サイドを制圧した点も特筆に値するポイントだ。

また、このポジションはその他のポジションと比較しても「群雄割拠」という印象が強く、次点選出も迷うところであったが、ベルギーのトマ・ムニエと天秤にかけた上で「攻守両面における安定感」を評価し、クロアチアのシメ・ヴルサリコとした。

LB部門

ヤン・ヴェルトンゲン(ベルギー)

こちらも厳密に言うと、左サイドバックを主戦場とはしていない。

だが、ベルギーが可変式の3バック(守備時には左センターバックが左サイドに開き、サイドバックのような位置取りを取ることが多い)を敷いていたこと、また試合によっては左サイドバック(左ウィングバックも)でプレーしている時間帯もあったことから、ヤン・ヴェルトンゲンをこの部門で選出することにした。

今大会では、元々定評のあったボール配給能力やインターセプト能力はもちろんのこと、フレキシブルなシステムにも柔軟に対応できる戦術理解度の高さも披露。準備期間が限られている中、監督のロベルト・マルティネスが、対戦相手や時間帯によって戦術を調整することが可能だったのは彼のような選手を擁していたからだ。

また、次点はメキシコのヘスス・ガジャルドを。こちらもヴェルトンゲンと同様に難解なタスクをソツなくこなし、グループリーグ突破に影なら貢献した。とりわけ、「今大会における番狂わせ」の一つとなったドイツ戦でのパフォーマンスは対峙するヨシュア・キミッヒの存在感が忘れさられるほど圧巻のものであった。

DMF部門

エンゴロ・カンテ(フランス)

ルカ・モドリッチ(クロアチア)

グループリーグにおけるベストイレブンを決定する際にも彼を推したが、再びエンゴロ・カンテを紹介する必要はあるだろう。

決勝のクロアチア戦では、クロアチアが「カンテ外し」の攻めを行ってきたことなど(胃腸炎を患わっていたという報道)もあり、地味な働きに終始したが、この試合を除くとほぼ全試合でMOM級のパフォーマンス。キリアン・エンバペという強烈な存在感に目が行きがちだが、フランス優勝の立役者の一人として称賛を送るべきだ。

そして、そのフランスと最後まで熱戦を繰り広げたクロアチアの英雄、ルカ・モドリッチが見せた輝きも忘れてはならない今大会のハイライト。

世界最高峰の状況把握と判断能力、そして洗練されたボールテクニックを持ちながらも献身的なプレーを厭わず、まさに「背中でチームを引っ張る」ということの重要性を説き続けた。

FIFAが選考する「最優秀選手賞」にも挙げられたが、これには異論もほとんど起こらなかったのではないだろうか。

なお次点は、黒子に徹し続けながらも才能の片りんを随所で発揮したポール・ポグバ(フランス)。また、「あのベルギー戦での出場停止さえなければブラジルも…」と最後まで悔やまれるほどの働きを見せていたカゼミーロ(ブラジル)とした。

OMF部門

エデン・アザール(ベルギー)

アントワーヌ・グリーズマン(フランス)

チームの結果こそ三位であったものの、エデン・アザールが放った異彩は「大会一位」に推しても差し支えないレベルにあった。

大会途中に基本戦術を変え、カウンターに重きを置いたベルギーであったが、この攻撃をキーマンとなっていたのが彼。自陣が送られるボールを受け取り、長距離ドリブルも幾度となく敢行。「取れそうで取れない」その技巧には、相手守備陣もなす術はなく、対戦する全てのチームが手を焼いた。

そしてベルギーと少し似通った勝ち上がりを見せたフランスの中で、アザール級の活躍を見せたのがアントワーヌ・グリーズマンだ。

試合の趨勢を自力で決められる能力を秘めながらも、レアル・ソシエダ、アトレティコ・マドリーで得た「チームのために闘う」をポリシーを胸に、利他的なプレーでフランスにエネルギーを与え続けた。キリアン・エンバッペの個人能力が着目されることは多かったが、彼があそこまで自由にプレーできたのは、グリーズマンというプレーヤーがその脇を支え続けたからである。

また、今大会のワールドカップはセットプレーが勝敗を分けるシーンも少なくなかったが、そこでもアザールとグリーズマンが大きく貢献したことも触れざるを得ないであろう。前者はドリブルによるファール奪取、後者はプレイスキックの場面でも何度も“違い”を見せた。

VAR(ビデオアシスタントレフェリー)の導入により、今後はセットプレーが勝敗を決める試合が増加することが予想されるが、彼らのように「巧みにファールをもらう技能」、「正確なプレイスキックを蹴る技能」を持ったプレーヤ―はより重宝される時代となるかもしれない。

ちなみに次点だが、大会途中にセントラルミッドフィルダーからトップ下にポジションを移してより脅威を与えたケヴィン・デ・ブライネ(ベルギー)。そして、大きく株を上げたアンテ・レビッチ(クロアチア)。さらに、残念ながらベスト8敗退でロシアを後にしたものの、常に可能性を感じさせるプレーを見せたフィリペ・コウチーニョ(ブラジル)も選びたい。

FW部門

マリオ・マンジュキッチ(クロアチア)

キリアン・エンバペ(フランス)

「FWはゴールを取ることが仕事」ということであれば、満場一致で大会得点王のハリー・ケインが選ばれるだろう。

だが、やはり、6得点のうち3本がPK。さらに、決勝トーナメント以降では存在感が消えていたことを考えると、彼を選ぶことは少し躊躇する。むしろ、クロアチアの最前線を牽引したマリオ・マンジュキッチの取り上げるべきではないだろうか。

これまでそのゴール数の少なさを批判されることもあったが、彼の真の価値はゴールではない。「ポストワーク」、「献身性」、「守備意識」、「闘志」、「勝負強さ」にあり、今大会でもその特長をいかんなく発揮。イングランドとの準決勝延長後半で豪快に左足を振りぬき、チームをファイナルへ導いたゴールも非常に印象的であった。

『Opta』によると、CL決勝とW杯決勝の二つでゴールを上げた選手は歴史上4人(フェレンツ・プスカシュ(レアル・マドリード/ハンガリー代表)、チボル・ゾルターン(バルセロナ/ハンガリー代表)、ゲルト・ミュラー(バイエルン/西ドイツ代表)、ジネディーヌ・ジダン(レアル・マドリー/フランス代表という錚々たる面々)しかおらず、彼がその5人目となったようだが、これも決して「偶然」と片付けるべきではない偉業だろう。

また、同じくゴール数以上にインパクトを残したのが、キリアン・エンバペ。

リオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウド、ネイマールらスターたちが大会を去って以降は「エンバペ祭り」となっていた感すらあるほど、瞬く間に「サッカー界の顔」となった。

何もないところから決定機を生み出せる、世界でも数少ない才能には、今後もビッグクラブが注目し続けるはずだ。

なお、彼のポジションは、フォーメーション上は「4-2-3-1」の右サイドであったが、「攻め残り」する時間が多く、ウィングのような立ち振る舞いだったためFW部門で選出した。

最後に次点だが、柔と剛が融合したプレースタイルでベルギーの最前線で効果的に働いたロメル・ルカク。そして、賛否両論はあるだろが、やはり大会得点王に輝いた功績は評価するべきであるイングランドのハリー・ケインとした。

まとめ

筆者が選出したベストイレブンと次点を改めて羅列したが、どのような感想を抱かれただろうか。

次点

ディエゴ・ゴディン(ウルグアイ)
アンドレアス・グランクヴィスト(スウェーデン)
シメ・ヴルサリコ(クロアチア)
ヘスス・ガジャルド(メキシコ)
カゼミーロ(ブラジル)
ポール・ポグバ(フランス)
アンテ・レビッチ(クロアチア)
ケヴィン・デ・ブライネ(ベルギー)
フィリペ・コウチーニョ(ブラジル)
ハリー・ケイン(イングランド)
ロメル・ルカク(ベルギー)

あなたの「マイベストイレブン」をTwitterのリプライより教えて頂けると幸いだ。

お知らせ

この度、Qolyでも連載経験のあるフリースタイルフットボーラーパフォーマーのtatsuya氏と共にYouTubeチャンネルを開設しました。

「二人の個人的な主観に基づき、ホットな話題や今後のサッカー界などについて徹底討論。メディアが言えない事にも、何も恐れず突っ込みます」という気構えでやって参ります。

暇つぶしがてらにチャンネル登録して頂けると幸いです。

© 株式会社ファッションニュース通信社